第7章: ブロック図の描き方
Block Diagram Notation
概要
ブロック図(ブロック線図、ブロックダイアグラム)は、システムの構成要素と信号の流れを線と記号で簡潔に図示したものである。 ディジタル信号処理では加減算、定数乗算、遅延といった基本要素を組み合わせてフィルタ(線形時不変システム)の構造を表現する(信号同士の乗算は変調などで使う別の演算である)。 信号は原則として左から右、上から下に流れるように描く。
ブロック
何らかの機能は四角いブロックで表す。四角の中に説明文や名称を書くのが一般的であるが、書ききれない場合は四角の外に書くこともある。
入力と出力
入力は左端から、出力は右端へ線で描く。端子であることを示す丸印を付ける場合もあるが、 信号は左から右に流れる原則があるため、端子を示す ○ を省略して線だけで描いても入出力を判別できる。
矢印を付けると信号の流れる方向がより明確になり、見誤りを防げる。
接続と分岐
ブロック同士を線で結ぶことで信号の流れを表す。原則として左から右、上から下に流れるように描く。 原則に反する方向(右から左、下から上)に流れる場合は矢印を付けて方向を明示する。
信号が複数に分岐する場合は分岐点に黒丸(●)を描き、 2本の線が分岐ではなく交差するだけの場合は、跨ぐように描くと見誤りを防げる(図3の左下)。
加減算
信号同士を加算する場合は、円の中に「+」を描いた加算器を用いる。 加算と減算が混在する場合は、円の中に総和記号「$\Sigma$」を書き、 各入力矢印の近くに「+」または「$-$」を記す。
乗算
信号同士を乗算する場合は、円の中に「$\times$」を描いた乗算器を用いる。 信号に定数(ゲイン)を乗じる場合は、信号の流れる方向を向いた三角形で表し、三角形の中または近くにゲインを書く。 フィルタ(線形時不変システム)の基本要素は定数の乗算で、信号同士の乗算は線形時不変ではない演算(変調などで使う)である。
遅延
信号を 1 サンプル遅延させる場合は、四角の中に $z^{-1}$ と書いたブロックを用いる。 非負整数 $N$ に対して $N$ サンプル遅延させる場合は $z^{-N}$ と書く(時間領域では $y[n]=x[n-N]$)。
z 変換との関係
$z^{-1}$ は z 変換において信号 $X(z)$ を 1 サンプル遅延させた $X(z) \cdot z^{-1}$ に対応する(両側 z 変換、または $n \lt 0$ で $x[n]=0$ とする片側 z 変換のとき)。 同様に $z^{-N}$ は $N$ サンプル遅延 $X(z) \cdot z^{-N}$ を意味する。
伝達関数ブロック
システム全体またはサブシステムの伝達関数を四角の中に $H(z)$ のように書く。 内部構造を抽象化し、線形時不変(LTI)な入出力関係だけを示したいときに用いる。 入力 $X(z)$ に対し、初期状態が 0 のとき(ゼロ状態応答)出力は $Y(z) = H(z) \cdot X(z)$ となる。
アップ/ダウンサンプリング
マルチレートシステムでは、サンプリングレートの変換を表す記号を用いる。 アップサンプリング($\uparrow N$)は各サンプルの間に $N-1$ 個のゼロを挿入してレートを $N$ 倍にする操作、 ダウンサンプリング($\downarrow N$)は $N$ サンプルに 1 つだけ残してレートを $1/N$ にする操作である(実用上は、エイリアシングを防ぐため前段に低域通過フィルタを置く)。
まとめ
- ブロック図:加減算・定数乗算・遅延の基本要素で信号処理システムを図示する(信号同士の乗算は変調などの別の演算)
- 信号の流れ:左から右、上から下が原則。逆方向は矢印を付ける
- 遅延 $z^{-1}$:1 サンプル遅延を表し、メモリ 1 個に対応する
- 伝達関数ブロック:$H(z)$ で内部構造を抽象化する
- アップ/ダウンサンプリング:$\uparrow N$, $\downarrow N$ でレート変換を表す
参考資料
よくある質問
Q1. ブロック図(ブロック線図)とは何か?
ブロック図(ブロックダイアグラム)は、システムの構成要素とその信号の流れを線と記号で簡潔に図示したものである。ディジタルフィルタ(線形時不変システム)では、加減算・定数乗算・遅延の基本要素を組み合わせて構造を表現する。信号同士の乗算は変調などで使う別の演算である。
Q2. ブロック図における $z^{-1}$ は何を意味するか?
$z^{-1}$ は 1 サンプルの遅延を表す。z 変換(両側 z 変換、または $n \lt 0$ で $x[n]=0$ とする片側 z 変換)で、信号 $X(z)$ を 1 サンプル遅延させたものが $z^{-1}X(z)$ と表されることに由来する。同様に、非負整数 $N$ に対して $z^{-N}$ は $N$ サンプルの遅延を意味する。