第1章 確率とは何か

1.1 日常の「確率っぽい」話

私たちは日常的に「確率」という言葉を使っている。

  • 「明日、雨が降る確率は60%らしい」
  • 「このくじ、当たる確率どれくらい?」
  • 「サイコロで6が出る確率は?」

これらはすべて、まだ起きていないこと、まだ結果が分からないことが、どれくらい起きそうかを表現しようとしている。

確率とは、不確実なことを数値で表す方法である。数学的には、事象(結果の集まり)に 0 以上 1 以下の数を対応させる規則として扱う(第3章で標本空間と確率の公理として学ぶ)。

天気予報 60%? 当 ? くじ引き サイコロ
図1: 日常で出会う「確率」

1.2 確率の直感的な意味

サイコロを1回振ることを考えてみましょう。

出る目は1, 2, 3, 4, 5, 6のどれかである。どの目も同じくらい出やすいと仮定すると:

  • 「1が出る」という結果は、6つの可能性のうち1つ
  • だから「1が出る確率」は $\frac{1}{6}$

これが、結果が有限個で同様に確からしい場合の、確率の基本的な計算方法である。

確率の基本公式(同様に確からしい場合)
古典的確率(ラプラスの定義)とも呼ばれる。

$$\text{確率} = \dfrac{\text{望む結果の数}}{\text{すべての結果の数}}$$

※ この公式は、すべての結果が「同様に確からしい」と仮定できる場合に成り立つ。詳しくは1.5節で解説する。

1 2 3 4 5 6 「1が出る」は6通り中1通り P(1が出る) = 1/6
図2: サイコロで1が出る確率

1.3 なぜ 0〜1 の数になるのか

確率が常に0以上1以下の数になる理由を、結果が有限個で同様に確からしい場合で考えてみましょう。このとき

$$\text{確率} = \dfrac{\text{望む結果の数}}{\text{すべての結果の数}}$$

  • 「望む結果の数」は0以上(負にはならない)
  • 「望む結果の数」は「すべての結果の数」以下(超えることはない)

したがって:

  • 確率の最小値は $\frac{0}{\text{全体}} = 0$(絶対に起きない)
  • 確率の最大値は $\frac{\text{全体}}{\text{全体}} = 1$(必ず起きる)

同様に確からしくない場合(1.5節のいびつなサイコロなど)も、確率は 0 以上 1 以下の数として扱う。頻度的解釈(1.6節)で考えても、起きた回数の割合なので 0〜1 に収まる。

なお「確率 0 = 絶対に起きない」「確率 1 = 必ず起きる」は、この章のように結果が有限個の場合の話である。結果が無限にある場合、例えば 0 以上 1 以下の実数から 1 つを偏りなく選ぶと、ちょうど 0.5 が選ばれる確率は 0 だが、起こりえないわけではない。詳しくは第3章で扱う。

0 絶対に 起きない 0.5 半々 1 必ず 起きる
図3: 確率の範囲は0から1
確率 意味
0 絶対に起きない
0.5 半々(五分五分)
1 必ず起きる

1.4 確率を表す記号

数学では、確率を次のように書く:

$$P(A)$$

これは「Aが起こる確率」を意味する。Pは Probability(確率)の頭文字、Aは注目している出来事(事象と呼ぶ)を表す。

例

  • $P(\text{サイコロで1が出る}) = \frac{1}{6}$
  • $P(\text{コインで表が出る}) = \frac{1}{2}$

1.5 「同様に確からしい」とは

1.2節のサイコロの例で、重要な仮定をしていた。

どの目も同じくらい出やすい

なぜこう言えるのか?

  • 理想化したサイコロは立方体で、どの面も同じ形・同じ大きさ
  • 重心が中央にあり、偏りがない
  • だから、どの面も出やすさが同じと仮定するのが自然である(実物のサイコロには、作りや投げ方によるわずかな偏りがありうる)

このように「物理的・構造的に対称だから、どの結果も等しく起こりやすい」と仮定できるとき、数学では「同様に確からしい」と言う。

「同様に確からしい」= 全ての結果が等確率で起こる
これは単なる言い換えではなく、「対称性などの理由により、どの結果も同じ確率を持つ」という数学的な仮定である。

この仮定が成り立たない場合、単純な数え上げでは確率を計算できない。例えば、いびつなサイコロ(重心が偏っている)では、ある目が出やすくなる。

公正なサイコロ 各目 1/6 いびつなサイコロ 各目の確率は不明
図4: 同様に確からしいかどうか

入門編では、「同様に確からしい」場合を中心に学ぶ。

1.6 確率と割合

確率は「割合」と深い関係がある。

1000回サイコロを振ったとき、1が出る回数はおよそ何回でしょうか?

$$1000 \times \dfrac{1}{6} \approx 167\text{回}$$

これは期待される回数で、実際に実験した回数はその周りでばらつく。例えば 1000 回なら、約 95% の確率で 144〜190 回の範囲に入る。

頻度的解釈では、確率は「長い目で見たときの割合」と捉える

これは確率の重要な解釈の一つである(頻度的解釈と呼ばれる)。なお、確率には「信念の度合い」として捉えるベイズ的解釈など、他の考え方もあるが、入門編では頻度的解釈を中心に学ぶ。

試行回数(対数目盛) 1の出た割合 1/6 10回 100回 1000回
図5: 試行回数を増やすと、1 の出た割合は 1/6 の周りで揺れながら近づく(概念図)

1.7 この章のまとめ

概念 意味
確率 不確実なことを0から1の数で表すもの
基本公式 望む結果の数 ÷ 全体の数(同様に確からしいとき)
同様に確からしい どの結果も同じ確率で起こる
頻度的解釈 同じ条件の試行を多数回繰り返したときの相対頻度として確率を捉える考え方

よくある質問

Q1. 確率はなぜ 0 から 1 の数で表すのですか?

結果が有限個で同様に確からしい場合、確率は「望む結果の数 ÷ 全体の結果の数」で計算でき、分子は 0 以上で分母を超えないので 0 以上 1 以下になる。同様に確からしくない場合も確率は 0 以上 1 以下の数として扱い、頻度的解釈で考えても起きた回数の割合なので 0〜1 に収まる。0 は「起きない」、1 は「必ず起きる」、0.5 は「五分五分」を表すが、「確率 0 = 絶対に起きない」は結果が有限個の場合の話である。

Q2. 「同様に確からしい」とは何ですか?

すべての結果が等しい確率で起こると仮定すること。サイコロの 6 面やコインの表裏のように、対称性に基づいて各結果を等確率とみなせる場合に使うモデルの仮定である。確率の基本公式(望む結果の数 ÷ 全体の数)は、この仮定の下で使う。

Q3. P(A) という記号は何を意味しますか?

P は Probability(確率)の頭文字、A は注目している出来事(事象)を表す。P(A) は「事象 A が起こる確率」と読む。例:P(サイコロで 1 が出る) = 1/6、P(コインで表が出る) = 1/2。

Q4. 頻度的解釈とは何ですか?

確率を「同じ条件の試行を多数回繰り返したときの相対頻度」と結びつけて捉える解釈。例えば公正なサイコロを 1000 回振ると、1 の目が出る回数の期待値は 1000 × 1/6 ≈ 167 回で、実際の回数はその周りでばらつく(約 95% の確率で 144〜190 回)。確率には他にベイズ的解釈(信念の度合い)もあるが、入門編では頻度的解釈を中心に学ぶ。

練習問題

問題1

表と裏が同様に確からしいコイン(公正なコイン)を1回投げて表が出る確率は?

問題1 の解答

$\dfrac{1}{2}$(表か裏の2通りのうち1通り)

問題2

よく切ったトランプ52枚から1枚引いてハートが出る確率は?

問題2 の解答

$\dfrac{13}{52} = \dfrac{1}{4}$(52枚中ハートは13枚)

問題3

1から10までの整数から1つを無作為に選んで、それが偶数である確率は?

問題3 の解答

$\dfrac{5}{10} = \dfrac{1}{2}$(偶数は2, 4, 6, 8, 10の5個)