第2章 場合の数

確率を計算するには、「何通りあるか」を数える技術が必要である。この章では、場合の数を正確に数える方法を学ぶ。

2.1 積の法則

基本的な考え方

2つの選択を順番に行うとき、全体の場合の数は「掛け算」で求められる。

例:服の組み合わせ

シャツが3着、ズボンが2本あるとき、組み合わせは何通り?

A B C シャツ 3着 1 2 ズボン 2本 組み合わせ: (A,1) (A,2) (B,1) (B,2) (C,1) (C,2) 計 6 通り = 3 × 2
図1: 積の法則 ― 3着 × 2本 = 6通り

積の法則(乗法原理)

選択Aが $m$ 通り、選択Bが $n$ 通りあるとき、AとBを順に行う方法は $m \times n$ 通り

3つ以上の場合

選択が3つ以上でも同じである。

例:3桁の数字

各桁に 1〜9 の数字を使うとき(0 は使わないものとする)、3桁の数字は何通り?

$$9 \times 9 \times 9 = 729 \text{ 通り}$$

2.2 和の法則

基本的な考え方

互いに重ならない場合を合わせるとき、全体の場合の数は「足し算」で求められる。

例:デザート選び

デザートに、ケーキが3種類、アイスが2種類用意されている。この中から1つ選ぶとき、選び方は何通り?

この中から1つ選ぶ ケーキ(3種) ショートケーキ チーズケーキ モンブラン アイス(2種) バニラ チョコ 3 + 2 = 5 通り
図2: 和の法則 ― ケーキ3種類とアイス2種類から1つ選ぶ = 5通り

和の法則(加法原理)

場合Aが $m$ 通り、場合Bが $n$ 通りあり、AとBが重ならないとき、AまたはBである方法は $m + n$ 通り

「重ならない」とは、両方のグループに同時に属するものが無いという意味である。例えばケーキであり同時にアイスでもあるデザートは存在しないので、$3 + 2$ で重複なく数えられる。もし重なりがあれば、その重複分を引く必要がある。

判断に迷ったら

  • 「A をしてから B も行う」(A かつ B)→ 掛け算 = 積の法則
  • 「A または B のどちらかを選ぶ」(重複なし)→ 足し算 = 和の法則

2.3 順列(並べ方)

順列とは

異なるものを順番に並べる方法の数を順列と呼ぶ。

例:3人を1列に並べる

A, B, Cの3人を1列に並べる方法は?

選び方: 1番目 3 3人から × 2番目 2 残り2人 × 3番目 1 残り1人 = 6通り 並べ方: ABC, ACB, BAC, BCA, CAB, CBA (6パターン)
図3: 3人を並べる順列 = 3 × 2 × 1 = 6通り

階乗

$n$ 個のものを全部並べる方法の数を $n!$($n$の階乗)と書く。

$$n! = n \times (n-1) \times (n-2) \times \cdots \times 2 \times 1$$
$n$ $n!$ 計算
01(特別な約束)
111
222 × 1
363 × 2 × 1
4244 × 3 × 2 × 1
51205 × 4 × 3 × 2 × 1

一部だけ並べる順列

$n$ 個から $r$ 個を選んで並べる方法の数を $_nP_r$ と書く。

$$_nP_r = n \times (n-1) \times \cdots \times (n-r+1) = \dfrac{n!}{(n-r)!}$$

例:5人から3人を選んで並べる

$$_5P_3 = 5 \times 4 \times 3 = 60 \text{ 通り}$$

2.4 組合せ(選び方)

組合せとは

異なるものから、順番を考えずにいくつか選ぶ方法の数を組合せと呼ぶ。

例:5人から3人を選ぶ

A, B, C, D, Eから3人選ぶ。

順列では ABC と ACB は別物だが、組合せでは「A, B, Cを選んだ」という同じ選び方である。

順列(並び順を区別): ABC ACB BAC BCA CAB CBA ← 6通り ↓ すべて同じ選び方 組合せ(選んだメンバーだけ): {A, B, C} ← 1通り
図4: 順列と組合せの違い

組合せの公式

$n$ 個から $r$ 個を選ぶ方法の数を $_nC_r$ または $\binom{n}{r}$ と書く。

$$_nC_r = \dfrac{_nP_r}{r!} = \dfrac{n!}{r!(n-r)!}$$

例:5人から3人を選ぶ

$$_5C_3 = \dfrac{5!}{3! \times 2!} = \dfrac{120}{6 \times 2} = 10 \text{ 通り}$$

なぜ $r!$ で割るのか

順列 $_5P_3 = 60$ には、同じ3人の選び方が $3! = 6$ 回ずつ数えられている。

例:{A, B, C} という選び方は、ABC, ACB, BAC, BCA, CAB, CBA の6通りとして数えられている。

だから $60 \div 6 = 10$ 通り。

組合せの性質

$$_nC_r = {}_nC_{n-r}$$

$n$ 個から $r$ 個選ぶことは、「選ばない $n-r$ 個を決める」ことと同じ。

例:$_5C_3 = {}_5C_2 = 10$

2.5 重要な公式と計算テクニック

パスカルの三角形

$$_nC_r = {}_{n-1}C_{r-1} + {}_{n-1}C_r$$

この等式の意味は図を見るとよく分かる。パスカルの三角形では、各数はすぐ上の左右2つの数を足したものになっている。

1 1 1 1 2 1 1 3 3 1 1 4 6 4 1 1 5 10 10 5 1 n=0 n=1 n=2 n=3 n=4 n=5 3+3=6
図5: パスカルの三角形 ― 各数は上の2つの和

よく使う値

$_nC_r$ r=0 r=1 r=2 r=3 r=4 r=5
n=515101051
n=6161520156
n=71721353521

2.6 この章のまとめ

法則・公式 意味
積の法則 連続した選択は掛け算 $m \times n$
和の法則 重ならない場合は足し算 $m + n$
順列 $_nP_r$ 並べ方の数 $\dfrac{n!}{(n-r)!}$
組合せ $_nC_r$ 選び方の数 $\dfrac{n!}{r!(n-r)!}$

順列と組合せの関係:$_nC_r = \dfrac{_nP_r}{r!}$

練習問題

問題1

4人を1列に並べる方法は何通り?

問題2

10人から委員長と副委員長を選ぶ方法は何通り?

問題3

10人から2人の委員を選ぶ方法は何通り?

問題4

A, B, C, D, Eの5文字から3文字を選んで並べる方法は何通り?

解答

問題1の解答

$4! = 24$ 通り(4人を1列に並べる=順列)

問題2の解答

$_{10}P_2 = 10 \times 9 = 90$ 通り(委員長と副委員長は区別する)

問題3の解答

$_{10}C_2 = \dfrac{10 \times 9}{2} = 45$ 通り(委員は区別しない)

問題4の解答

$_5P_3 = 5 \times 4 \times 3 = 60$ 通り(3人を順番に並べる=順列)

よくある質問

積の法則と和の法則はどう使い分けるか

続けて行う選択(A をしてから B もする)は掛け算=積の法則、どちらか一方を選ぶ(A または B で重複なし)は足し算=和の法則を使う。「〜かつ〜」なら積、「〜または〜」なら和と考えると使い分けられる。

順列と組合せの違いは何か

順列 $P(n,r)$ は順番を区別して $r$ 個を並べる方法の数、組合せ $C(n,r)$ は順番を区別せず $r$ 個を選ぶ方法の数である。同じ選び方でも並び順を数えるかどうかで変わり、$C(n,r) = P(n,r)/r!$ の関係がある。

階乗 n! とは何か

$n!$ は $1$ から $n$ までの整数をすべて掛けた値で、$n$ 個のものを 1 列に並べる順列の総数を表す。例えば $3! = 3 \times 2 \times 1 = 6$。約束として $0! = 1$ と定める。