第2章 傾きの概念
直線の傾きから曲線の傾きへ
2.1 直線の傾き
まず、中学校で学んだ直線の傾きを復習しよう。
直線 $y = mx + n$ において、$m$ を傾き(slope)と呼ぶ。
2点 $(x_1, y_1)$ と $(x_2, y_2)$ を通る直線の傾きは:
$$m = \frac{y_2 - y_1}{x_2 - x_1} = \frac{\text{縦の変化量}}{\text{横の変化量}}$$傾きの意味
傾き $m = 2$ は、「$x$ が $1$ 増えると、$y$ は $2$ 増える」ということを意味する。
2.2 曲線の問題
直線の傾きは、どの2点を取っても同じ値になる。しかし、曲線ではどうだろうか。
曲線上の「ある点での傾き」をどのように定義すればよいだろうか。
2点を結ぶと傾きは計算できますが、それは区間全体の平均であって、ある1点での傾きではない。
2.3 割線と接線
この問題を解決するために、割線と接線という概念を導入する。
曲線上の2点を結ぶ直線を割線(せきせん)と呼ぶ。
曲線上の1点で曲線に接する直線を接線(せっせん)と呼ぶ。
アイデア:割線を接線に近づける
ここで重要なアイデアが登場する。
点 Q を点 P に限りなく近づけると、割線は接線に近づく。
このとき、割線の傾きは接線の傾きに近づく。
2.4 接線の傾きを求める
この考え方を数式で表現してみよう。
曲線 $y = f(x)$ 上の点 P$(a, f(a))$ における接線の傾きを求める。
Step 1:割線の傾きを計算する
点 P$(a, f(a))$ と、そこから $h$ だけ離れた点 Q$(a+h, f(a+h))$ を考える。
割線 PQ の傾きは:
$$\text{割線の傾き} = \frac{f(a+h) - f(a)}{(a+h) - a} = \frac{f(a+h) - f(a)}{h}$$Step 2:h を 0 に近づける
$h$ を $0$ に近づけると、点 Q は点 P に近づく。
このとき、割線の傾きは接線の傾きに近づく:
$$\text{接線の傾き} = \lim_{h \to 0} \frac{f(a+h) - f(a)}{h}$$曲線 $y = f(x)$ 上の点 $(a, f(a))$ における接線の傾きは:
$$\lim_{h \to 0} \frac{f(a+h) - f(a)}{h}$$この極限が存在するとき、その値を微分係数と呼ぶ。
2.5 具体例で計算
例題:$f(x) = x^2$ について、$x = 2$ における接線の傾きを求めよ。
Step 1:割線の傾きを計算する
$a = 2$ とおく。割線の傾きは:
$$\frac{f(2+h) - f(2)}{h}$$Step 2:$f(2+h)$ を展開する
$$f(2+h) = (2+h)^2$$$(2+h)^2$ を展開すると:
$$(2+h)^2 = 2^2 + 2 \cdot 2 \cdot h + h^2 = 4 + 4h + h^2$$Step 3:$f(2)$ を計算する
$$f(2) = 2^2 = 4$$Step 4:差を計算する
$$f(2+h) - f(2) = (4 + 4h + h^2) - 4 = 4h + h^2$$Step 5:$h$ で割る
$$\frac{f(2+h) - f(2)}{h} = \frac{4h + h^2}{h}$$分子を因数分解すると:
$$\frac{h(4 + h)}{h} = 4 + h \quad (h \neq 0)$$Step 6:$h \to 0$ の極限をとる
$$\lim_{h \to 0} (4 + h) = 4 + 0 = 4$$答え:接線の傾きは 4
この章のまとめ
- 直線の傾きは $\dfrac{\Delta y}{\Delta x}$ で計算できる
- 曲線では傾きが場所によって異なる
- 割線:曲線上の2点を結ぶ直線
- 接線:曲線上の1点で接する直線
- 割線の傾き → 接線の傾き($h \to 0$ で)
- 接線の傾き $= \displaystyle\lim_{h \to 0} \frac{f(a+h) - f(a)}{h}$