第2章: 線積分の幾何学

直線の表現方法と線積分の幾何学的意味を理解する。

2.1 直線のパラメータ表示

ラドン変換は「直線に沿った線積分」なので、まず平面上のすべての直線を系統的に表す方法を用意する。

なぜ $y = mx + b$ ではだめなのか

直線の傾き $m$ と切片 $b$ による表示 $y = mx + b$ は簡便であるが、垂直な直線($x = c$ の形)を表せないという致命的な欠点がある。ラドン変換ではあらゆる方向の直線を扱うため、この表示では不十分である。

法線形(ヘッセの標準形)

すべての直線を統一的に扱える表示が法線形である。任意の直線 $L$ に対して、原点 $O$ から $L$ に垂線を下ろすと、次の2つの量で直線が一意に決まる。

  • $s$:垂線の長さ(原点から直線までの距離)
  • $\theta$:垂線の方向が $x$ 軸となす角度
$x$ $y$ $O$ $L$ $s$ $\theta$ $H$ $P=(x,y)$
図1: 直線の法線形。原点 $O$ から直線 $L$ に下ろした垂線(赤)の足が $H$、その長さが $s$、垂線が $x$ 軸となす角が $\theta$。$P$ は $L$ 上の点で、$\overrightarrow{OH}\perp\overrightarrow{HP}$。

図1のように、原点 $O$ から $L$ に下ろした垂線の足を $H = (s\cos\theta,\ s\sin\theta)$ とし、直線 $L$ 上の任意の点を $P = (x, y)$ とする。垂線 $\overrightarrow{OH}$ と、直線に沿った $\overrightarrow{HP}$ は、直交するから内積は $0$ である。

$$\overrightarrow{OH}\cdot\overrightarrow{HP}=0$$

これが「点 $P$ が直線 $L$ 上にある」ための条件である。2つのベクトルを成分で書くと

$$\overrightarrow{OH}=(s\cos\theta,\ s\sin\theta), \qquad \overrightarrow{HP}=(x-s\cos\theta,\ \ y-s\sin\theta)$$

なので、内積(各成分の積の和)を計算すると

$$s\cos\theta\,(x-s\cos\theta) + s\sin\theta\,(y-s\sin\theta) = 0$$

左辺の各項に共通因子 $s$ があるので、$s\neq 0$ のとき両辺を $s$ で割れる:

$$\cos\theta\,(x-s\cos\theta) + \sin\theta\,(y-s\sin\theta) = 0$$

括弧を展開し、$s$ を含む項をまとめると

$$\cos\theta\,x + \sin\theta\,y - s\,(\cos^2\theta+\sin^2\theta) = 0$$

ここで三角関数の基本公式 $\cos^2\theta+\sin^2\theta = 1$ を使うと、$s$ の係数がちょうど $1$ になり、

$$\cos\theta\,x + \sin\theta\,y - s = 0$$

すなわち、次の直線の方程式(法線形)が得られる。

直線の法線形(ヘッセの標準形)

$$\boxed{x \cos\theta + y \sin\theta = s}$$
  • $\theta \in [0, \pi)$:直線の法線方向が $x$ 軸となす角度
  • $s \in \mathbb{R}$:原点から直線への符号付き距離

$s > 0$ なら直線は法線方向 $(\cos\theta, \sin\theta)$ の側にあり、$s < 0$ なら反対側にある。$s = 0$ なら直線は原点を通る。

$\theta$ の範囲はなぜ $[0, \pi)$ なのか

$(s, \theta)$ と $(-s, \theta + \pi)$ は同じ直線を表す。重複を避けるため $\theta$ を $[0, \pi)$ に制限する(練習問題3で確認)。

直線上の点のパラメータ表示

直線 $L$ 上の点を式で表そう。$L$ 上を動くには、直線に沿った方向、すなわち法線方向 $(\cos\theta, \sin\theta)$ に垂直な方向へ進めばよい。あるベクトル $(a, b)$ に垂直なベクトルは、2成分を入れ替えて片方の符号を変えると作れる。たとえば $(b, -a)$ がそうで、内積を計算すると

$$(a, b)\cdot(b, -a) = a\cdot b + b\cdot(-a) = ab - ab = 0$$

となり確かに直交する(符号を逆の成分につけた $(-b, a)$ も同じく垂直)。法線 $(\cos\theta, \sin\theta)$ にこの操作を施すと、垂直な単位ベクトルが $(\sin\theta, -\cos\theta)$ と $(-\sin\theta, \cos\theta)$ の2つ得られる。どちらも直線に沿っており前者でも誤りではないが、ここでは後で使うラドン変換の標準的な式に符号がそろう後者をとり、直線に沿った方向ベクトルを $\boldsymbol{d}$ とする(理由は下の注を参照):

$$\boldsymbol{d} = (-\sin\theta, \; \cos\theta)$$

長さは $|\boldsymbol{d}| = \sqrt{(-\sin\theta)^2 + (\cos\theta)^2} = \sqrt{\sin^2\theta+\cos^2\theta} = 1$ なので、$\boldsymbol{d}$ は直線に沿った単位ベクトルである。

$\boldsymbol{d}$ の向きの選び方

もう一方の $(\sin\theta, -\cos\theta)$ を選んでも、向きが逆になるだけで同じ直線に沿った単位ベクトルである。向きを逆にとることは線積分では $t \to -t$ の置き換えにあたり、$t$ を $-\infty$ から $\infty$ まで積分するので結果は変わらない。それでも $(-\sin\theta, \cos\theta)$ を採るのは、法線 $(\cos\theta, \sin\theta)$ を $+90^\circ$ 回転した向きで、§2.3 以降で使う標準的なラドン変換の式 $f(s\cos\theta - t\sin\theta,\ s\sin\theta + t\cos\theta)$ に符号がそろうからである。

直線上の点 $P$ は、垂線の足 $H=(s\cos\theta,\ s\sin\theta)$ から $\boldsymbol{d}$ の向きに $t$ だけ進んだ点である。すなわち、$t\in(-\infty,\infty)$ を用いて $P = H + t\,\boldsymbol{d}$ と書ける。成分で書くと

$$P = (x,\ y) = (s\cos\theta,\ s\sin\theta) + t\,(-\sin\theta,\ \cos\theta)$$

各成分を取り出すと、次の媒介変数表示が得られる。

直線上の点の媒介変数表示

$$\begin{cases} x = s\cos\theta - t\sin\theta \\ y = s\sin\theta + t\cos\theta \end{cases}$$

$t = 0$ が垂線の足 $H$、$t$ が増加する方向は $\boldsymbol{d} = (-\sin\theta, \cos\theta)$ の向きである。

この直線に沿った線積分を扱う前に、パラメータ $t$ の幾何学的な意味(次の図)を押さえておく。

$x$ $y$ $O$ $L$ $s$ $\theta$ $\boldsymbol{d}$ $2$ $1$ $0$ $-1$ $-2$ $t$
図2: 直線 $L$ 上の点のパラメータ表示。直線は $(s,\theta)$ で決まり($s$=原点 $O$ から $L$ への符号付き距離、$\theta$=法線が $x$ 軸となす角)、その上の点は単位方向ベクトル $\boldsymbol{d}=(-\sin\theta,\cos\theta)$ に沿うパラメータ $t$ で表す。$t=0$ は垂線の足、$\boldsymbol{d}$ だけ進むごとに $t$ が $1$ 増えるので、整数 $t$ の点(青)は等間隔に並ぶ。一般の点は $P(t)=(s\cos\theta-t\sin\theta,\ s\sin\theta+t\cos\theta)$。

$t$ は直線に沿った距離

図2のように、直線上の点は単位方向ベクトル $\boldsymbol{d} = (-\sin\theta,\ \cos\theta)$ に沿って一定の速さで動く。実際、速度は $(x'(t), y'(t)) = (-\sin\theta,\ \cos\theta)$ で、その速さは

$$\sqrt{x'(t)^2 + y'(t)^2} = \sqrt{\sin^2\theta + \cos^2\theta} = 1$$

と一定である(練習問題2)。

したがって $t$ は垂線の足 $H$($t = 0$)から直線に沿って測った符号付き距離(移動距離)に等しい。図2で $t$ を $1$ ずつ変えた点が等間隔に並ぶのはこのためである。この性質($t$ が直線に沿った距離そのものであること)が次節の線積分で本質的な役割を果たす。

2.2 線積分の定義

直線に沿った線積分

関数 $f(x, y)$ の直線 $L$ に沿った線積分は

$$\displaystyle\int_L f(x,y) \, dl = \displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} f(x(t), y(t)) \, dt$$

ここで $(x(t), y(t))$ は直線 $L$ のパラメトリック表示で、$t$ は直線に沿った距離(だから $dl = dt$)。

x-y 平面上の減衰係数(密度)の分布 f(x,y) を 3D で描き(高さ=f の値)、平面上の直線 L に沿って切った断面(線積分 ∫_L f dl に対応)を露出させた図 $f(x,y)$ $L$ $\displaystyle\int_L f(x,y)\,dl$
図3: 線積分の幾何学的意味。関数 $f(x,y)$ は $x$-$y$ 平面上の各点の減衰係数の分布で、図では高さがその値を表す(ここでは2つの山をもつ例)。平面上の直線 $L$(ピンク)に沿って $f$ を切ると断面(濃い青)が現れ、図のように $f \geq 0$ なら断面積が線積分 $\int_L f(x,y)\,dl$ に等しい(一般には、$f<0$ の部分が負に寄与する符号付き面積である)。減衰係数は $f \geq 0$ なので、これは $L$ に沿って $f$ を積算した値(投影値)になる。

物理的解釈:$f$ が減衰係数のように「単位長さあたりの量」を表すとき、$\int_L f(x,y)\,dl$ は経路 $L$ に沿ってそれを足し集めた量になる。第1章で見たX線CTでは、$f$ を物質の減衰係数とみなすと、この線積分がそのまま投影データ(ラドン変換の値)に等しく、物体の濃い経路を通る直線ほど線積分は大きくなる。X線の透過強度 $I$ との関係($I=I_0e^{-\int_L f(x,y)\,dl}$ なので投影値は $-\ln(I/I_0)$ として測定値から求める)は第1章 1.2を参照。

2.3 線積分としてのラドン変換

§2.1 の直線のパラメータ表示と §2.2 の線積分を組み合わせると、ラドン変換を定義できる。第1章で直感的に導入したように、これは各直線に沿った $f$ の線積分を、すべての直線 $(s,\theta)$ について集めたものである。

ラドン変換(線積分による定義)

ラドン変換は直線 $L_{s,\theta}$ に沿った $f$ の線積分であり、直線に沿った距離 $t$ を使えば

$$p(s, \theta) = \mathcal{R}f(s, \theta) = \displaystyle\int_{L_{s,\theta}} f(x,y) \, dl = \displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} f(s\cos\theta - t\sin\theta,\ s\sin\theta + t\cos\theta) \, dt$$

と書ける。

ここで、この $s$(原点から直線までの法線距離)が、第1章 §1.2測った投影 $p(s)$ の $s$(検出器上の位置)と同じものであることを確認しておく。平行ビームでは検出器列がちょうど法線方向に並ぶので、検出器上の位置がそのまま法線距離 $s$ になる。したがって検出器から得た投影 $p(s)=-\ln(I(s)/I_0)$ は、その方向 $\theta$ におけるラドン変換 $p(s,\theta)$ そのものである。

中心 法線距離 検出器の位置 検出器列 $O$ $f(x,y)$ $s$ $s$
図4: 平行X線では、検出器列が法線方向に並ぶ。原点 $O$ から注目するX線までの法線距離(緑)と、検出器列の中心からその検出器までの位置(青)は、どちらも同じ向きに測った同じ長さ $s$ である。だから「検出器上の位置 $s$」と「直線の法線距離 $s$」は一致し、第1章 §1.2 で測った投影 $p(s)$ は法線距離 $s$ の直線のラドン変換 $p(s,\theta)$ になる。

記法について

  • $p(s, \theta)$:投影データ(projection)を表す
  • $\mathcal{R}$:ラドン変換作用素
  • 文献によっては $\hat{f}(s, \theta)$ や $Rf(s, \theta)$ とも書く

関数 $p(s, \theta)$ はすべての $(s, \theta)$ について集めると $(s, \theta)$ 平面上の2次元データとなり、サイノグラム(sinogram)と呼ばれる。CTスキャナは様々な角度 $\theta$ から投影データ $p(s, \theta)$ を収集し、これを逆変換することで体内の断層画像 $f(x,y)$ を再構成する。

1917年にRadonが証明した驚くべき事実は、十分に良い性質を持つ関数 $f$ は、そのラドン変換 $p$ から完全に復元できるということである。この逆変換の理論は第3章で詳しく扱う。

2.4 具体例

例1: 原点中心の円板

半径 $R$ の円板内で $f = 1$、外で $f = 0$ とする:

$$f(x, y) = \begin{cases} 1 & x^2 + y^2 \leq R^2 \\ 0 & \text{otherwise} \end{cases}$$

ラドン変換の計算

対称性より $p(s, \theta)$ は $\theta$ に依存しない。$\theta = 0$ として計算すると、直線は $x = s$ となる。

$|s| \leq R$ のとき、直線は円板と交わり、交点での $y$ の範囲は $-\sqrt{R^2 - s^2} \leq y \leq \sqrt{R^2 - s^2}$。

$$p(s, 0) = \displaystyle\int_{-\sqrt{R^2-s^2}}^{\sqrt{R^2-s^2}} 1 \, dy = 2\sqrt{R^2 - s^2}$$

$|s| > R$ のとき $p(s, 0) = 0$。

$x$ $y$ $O$ $x=s$ $s$ $R$ 元の関数 $f$ $\mathcal{R}$ $s$ $p$ $-R$ $R$ $2R$ $p(s)=2\sqrt{R^2-s^2}$
図5: 原点中心・半径 $R$ の一様な円板($f=1$)のラドン変換。$\theta=0$ では直線は $x=s$(ピンク)で、円板を切り取る弦(太線)の長さがそのまま投影値になる。弦の長さは $2\sqrt{R^2-s^2}$ なので、$s$ を動かすと投影 $p(s)$ は上半分が楕円(横半径 $R$・縦半径 $2R$)の曲線を描き、$|s|>R$ では $0$ となる。対称性より $p$ は $\theta$ に依存しない。

例2: 点状の物体

点 $(a, b)$ にだけ存在する物体を考える。角度 $\theta$ の投影では、その点を通る直線の上にだけ値が集中する。その直線の法線距離は、法線形 $x\cos\theta + y\sin\theta = s$ に $(a,b)$ を代入して

$$s = a\cos\theta + b\sin\theta$$

である。したがって、この点の投影は $(s, \theta)$ 平面上で曲線 $s = a\cos\theta + b\sin\theta$、すなわち正弦波(サインカーブ)を描く。点がこのように正弦波(sine)になることが、§2.3 で触れたサイノグラムという名前の由来である(詳しくは第3章)。

左:単位円内の3つの点(赤・青・緑)からなる分布 f(x,y)。右:そのサイノグラム。各点が (s,θ) 平面で s=a cosθ + b sinθ のサインカーブを描き、点の色とサインカーブの色が対応する。
図6: サイノグラムの例。=3つの点からなる分布 $f(x,y)$(色分け)、=そのサイノグラム $p(s,\theta)$。各点 $(a,b)$ は $(s,\theta)$ 平面上で $s = a\cos\theta + b\sin\theta$ のサインカーブを描き、点の色とサインカーブの色が対応している。図3のようになめらかに広がった $f$ では各点の寄与が重なってぼやけるが、点状の特徴があると曲線がはっきり現れる。

2.5 練習問題

問題1

直線 $x + y = 1$ を $(s, \theta)$ パラメータで表せ。

解答

法線形 $x \cos\theta + y \sin\theta = s$ では、$x, y$ の係数 $(\cos\theta, \sin\theta)$ が長さ $1$ の単位ベクトルである($\cos^2\theta + \sin^2\theta = 1$)。一方 $x + y = 1$ の係数 $(1, 1)$ の長さは $\sqrt{1^2 + 1^2} = \sqrt{2}$ で $1$ ではない。そこで両辺を $\sqrt{2}$ で割り、係数を単位ベクトルにそろえる:

$$\dfrac{1}{\sqrt{2}}x + \dfrac{1}{\sqrt{2}}y = \dfrac{1}{\sqrt{2}}$$

係数が $\left(\dfrac{1}{\sqrt{2}}, \dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)$ となった。$\cos 45° = \sin 45° = \dfrac{1}{\sqrt{2}}$ だから、$\theta = 45° = \dfrac{\pi}{4}$、$s = \dfrac{1}{\sqrt{2}} = \dfrac{\sqrt{2}}{2}$。

問題2

直線 $L_{s,\theta}$ のパラメトリック表示 $(x(t), y(t)) = (s\cos\theta - t\sin\theta, s\sin\theta + t\cos\theta)$ で速さが一定 $\sqrt{x'(t)^2 + y'(t)^2} = 1$(したがって $t$ は直線に沿った距離)であることを確認せよ。

解答

$x'(t) = -\sin\theta$, $y'(t) = \cos\theta$

$$\sqrt{x'(t)^2 + y'(t)^2} = \sqrt{\sin^2\theta + \cos^2\theta} = 1$$

よって速さは一定で、$t$ は直線に沿った距離($dl = dt$)。

問題3

なぜ $\theta$ の範囲を $[0, \pi)$ に制限するのか説明せよ。

解答

$(s, \theta)$ と $(-s, \theta + \pi)$ は同じ直線を表す:

$$x\cos(\theta+\pi) + y\sin(\theta+\pi) = -s \;\Longrightarrow\; -x\cos\theta - y\sin\theta = -s \;\Longrightarrow\; x\cos\theta + y\sin\theta = s$$

重複を避けるため、$\theta \in [0, \pi)$ に制限する。

問題4

$(s, \theta) = (2, 60°)$ で表される直線の方程式を求めよ。

解答

$x \cos 60° + y \sin 60° = 2$、すなわち $\dfrac{1}{2}x + \dfrac{\sqrt{3}}{2}y = 2$、よって $x + \sqrt{3}y = 4$。

問題5

関数 $f(x, y) = e^{-(x^2+y^2)}$(ガウシアン)の $\theta = 0$ でのラドン変換 $p(s, 0)$ を計算せよ。

解答

$\theta = 0$ のとき直線は $x = s$。

$$p(s, 0) = \displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} e^{-(s^2+y^2)} \, dy = e^{-s^2} \displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} e^{-y^2} \, dy = \sqrt{\pi} e^{-s^2}$$

ガウス積分 $\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} e^{-y^2} dy = \sqrt{\pi}$ を使用。

問題6

$f(x, y) = 1$(定数関数)を原点中心の半径 $R$ の円内に制限したときのラドン変換が $p(s) = 2\sqrt{R^2 - s^2}$ となることを、$\theta = \dfrac{\pi}{4}$ の場合に直接計算で確かめよ。

解答

$\theta = \dfrac{\pi}{4}$ のとき、直線上の点は

$$x = \dfrac{s - t}{\sqrt{2}}, \quad y = \dfrac{s + t}{\sqrt{2}}$$

$x^2 + y^2 \leq R^2$ の条件は

$$\dfrac{(s-t)^2 + (s+t)^2}{2} = s^2 + t^2 \leq R^2$$

よって $|t| \leq \sqrt{R^2 - s^2}$($|s| \leq R$ のとき)

$$p\!\left(s, \dfrac{\pi}{4}\right) = \displaystyle\int_{-\sqrt{R^2-s^2}}^{\sqrt{R^2-s^2}} 1 \, dt = 2\sqrt{R^2 - s^2}$$

よくある質問

直線の $(s,\theta)$ パラメータ化とは何か

直線を、原点からの法線距離 $s$($-\infty \lt s \lt \infty$)と法線の向き $\theta$($0 \le \theta \lt \pi$)の2つで表す方法である。直線の式は $x\cos\theta+y\sin\theta=s$。この $(s,\theta)$ がサイノグラムの座標、すなわち投影データ $p(s,\theta)$ の定義域になる。

線積分とラドン変換はどう関係するか

ラドン変換 $\mathcal{R}f(s,\theta)$ は、向き $\theta$・距離 $s$ で決まる直線 $L_{s,\theta}$ に沿った $f$ の線積分そのものである。距離 $t$ を使えば $\mathcal{R}f(s,\theta)=\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} f(s\cos\theta - t\sin\theta,\ s\sin\theta + t\cos\theta)\,dt$。物体の濃い経路を通る直線ほど値は大きい。

点状の物体のラドン変換はどうなるか

点 $(a,b)$ の投影はその点を通る直線上に集中するので、$(s,\theta)$ 平面で $s=a\cos\theta+b\sin\theta$ という正弦曲線を描く。これが「サイノグラム(sinogram)」の名前の由来である。一般の物体は点の重ね合わせなので、サイノグラムは多数の正弦曲線が重なったものになる。