第5章 条件付き確率
5.1 情報が増えると何が変わるか
確率は「何を知っているか」によって変わる。
例:サイコロ
サイコロは振られたが、まだどの目が出たのか見ていない。
Q:6が出た確率は?
答え:$\dfrac{1}{6}$
ここで誰かが「偶数!」と言うのが聞こえた。
Q:6が出た確率は?
サイコロで偶数の目は $\{2, 4, 6\}$ の3つ。6はそのうちの1つ。
答え:$\dfrac{1}{3}$
情報が増えたことで確率が変わった!
注意:この例では確率が上がったが、情報によっては確率が下がることもあるし、変わらないこともある。例えば「奇数が出た」という情報を得たら、6が出る確率は $\dfrac{1}{6}$ から $0$ に下がる。
5.2 条件付き確率の定義
「Bが起こったという条件の下で、Aが起こる確率」を条件付き確率と呼び、$P(A|B)$ と書く。
覚え方のコツ
「Bが起こったとわかった後だから、
分母はBの確率(新しい全体)、
分子はBの中でAも起こる確率」
具体例:サイコロでのベン図
先ほどの例を改めてベン図で表現すると、次のようになる(図5.2)。B が起きたと知った後は、図5.2の緑の円(B)の部分だけを考えればよい。その中で A も起こる確率が条件付き確率である。
図の読み方
- 青い円(A):6が出る = {6}
- 緑の円(B):偶数の目 = {2, 4, 6}
- 重なり部分(A∩B):6が出る(6は偶数) = {6}
- P(A|B) = 1/3:偶数(B)の中で、6(A)である確率
重要:「Bが起こった」という条件のもとでは、緑の円(B)が新しい全体となる。その中でAも起こる(重なり部分の)確率を求めればよい。
数式で確認
- $A$:6が出る → $P(A) = \dfrac{1}{6}$
- $B$:偶数が出る → $P(B) = \dfrac{3}{6} = \dfrac{1}{2}$
- $A \cap B$:6が出る(6は偶数なので) → $P(A \cap B) = \dfrac{1}{6}$
「偶数」という情報を得たことで、6が出る確率が $\dfrac{1}{6}$ から $\dfrac{1}{3}$ に上がった!
一般的な場合のベン図
5.3 条件付き確率の計算例
例1:2つのサイコロ
2つのサイコロを振った。和が8以上だとわかった。このとき、和がちょうど10である確率は?
解答
- $B$:和が8以上
- $A$:和が10
まず、各事象に含まれる組み合わせを数える。
和が8以上の組み合わせ
- 和8:$(2,6),(3,5),(4,4),(5,3),(6,2)$ → 5通り
- 和9:$(3,6),(4,5),(5,4),(6,3)$ → 4通り
- 和10:$(4,6),(5,5),(6,4)$ → 3通り
- 和11:$(5,6),(6,5)$ → 2通り
- 和12:$(6,6)$ → 1通り
合計:$5+4+3+2+1 = 15$ 通り
和が10の組み合わせ:3通り
$$P(A|B) = \dfrac{\color{green}{3}}{\color{blue}{15}} = \color{orange}{\dfrac{1}{5}}$$例2:トランプ
トランプから1枚引いた。それが絵札だとわかった。このとき、それがハートである確率は?
解答
- $B$:絵札 → 12枚
- $A$:ハート → 13枚
- $A \cap B$:ハートの絵札 → 3枚
5.4 確率の乗法定理
条件付き確率の定義式を変形すると:
$P(B) > 0$ のとき、
$$P(A \cap B) = P(B) \times P(A|B)$$同様に、$P(A) > 0$ のとき、
$$P(A \cap B) = P(A) \times P(B|A)$$条件付き確率の定義より、
$$P(A|B) = \dfrac{P(A \cap B)}{P(B)}$$両辺に $P(B)$ を掛けると、
$$P(B) \times P(A|B) = P(A \cap B)$$2つ目の式も同様に、$P(B|A) = \dfrac{P(A \cap B)}{P(A)}$ から導かれる。
「AとBが同時に起こる確率」は「Bが起こる確率」×「Bが起こったときにAが起こる確率」
例:くじ引き
10本中3本当たりのくじがある。2本続けて引くとき、2本とも当たる確率は?
解答
- 1本目が当たる確率:$\dfrac{3}{10}$
- 1本目が当たったとき、2本目も当たる確率:$\dfrac{2}{9}$
5.5 全確率の公式
標本空間を互いに排反な事象 $B_1, B_2, \ldots, B_n$ に分割できるとき:
$B_1, B_2, \ldots, B_n$ が標本空間 $S$ の分割(互いに排反で和が $S$)で、各 $P(B_i) > 0$ のとき、
$$P(A) = \sum_{i=1}^{n} P(B_i)P(A|B_i) = P(B_1)P(A|B_1) + P(B_2)P(A|B_2) + \cdots + P(B_n)P(A|B_n)$$$B_1, B_2, \ldots, B_n$ は $S$ の分割なので、
$$S = B_1 \cup B_2 \cup \cdots \cup B_n, \quad B_i \cap B_j = \emptyset \; (i \neq j)$$事象 $A$ を各 $B_i$ との共通部分に分解すると、
$$A = A \cap S = A \cap (B_1 \cup B_2 \cup \cdots \cup B_n) = (A \cap B_1) \cup (A \cap B_2) \cup \cdots \cup (A \cap B_n)$$$B_i$ たちが互いに排反なので、$A \cap B_i$ たちも互いに排反である。
加法性より、
$$P(A) = P(A \cap B_1) + P(A \cap B_2) + \cdots + P(A \cap B_n)$$乗法定理 $P(A \cap B_i) = P(B_i)P(A|B_i)$ を各項に適用すると、
$$P(A) = P(B_1)P(A|B_1) + P(B_2)P(A|B_2) + \cdots + P(B_n)P(A|B_n)$$例:2つの袋
袋1には赤玉3個、白玉2個。袋2には赤玉4個、白玉6個。
コインを投げて表なら袋1、裏なら袋2から1個取り出す。
赤玉を取り出す確率は?
解答
- $B_1$:袋1を選ぶ → $P(B_1) = \dfrac{1}{2}$
- $B_2$:袋2を選ぶ → $P(B_2) = \dfrac{1}{2}$
- $P(\text{赤}|B_1) = \dfrac{3}{5}$
- $P(\text{赤}|B_2) = \dfrac{4}{10} = \dfrac{2}{5}$
5.6 ベイズの定理
事象Aが起こったとき、それが $B_i$ が原因である確率を求める公式である。
$B_1, B_2, \ldots, B_n$ が標本空間 $S$ の分割で、$P(A) > 0$ かつ各 $P(B_i) > 0$ のとき、
$$P(B_i|A) = \dfrac{P(B_i)P(A|B_i)}{P(A)} = \dfrac{P(B_i)P(A|B_i)}{\sum_{j=1}^{n} P(B_j)P(A|B_j)}$$条件付き確率の定義より、
$$P(B_i|A) = \dfrac{P(A \cap B_i)}{P(A)}$$乗法定理より、$P(A \cap B_i) = P(B_i)P(A|B_i)$ なので、
$$P(B_i|A) = \dfrac{P(B_i)P(A|B_i)}{P(A)}$$分母の $P(A)$ に全確率の公式を適用すると、
$$P(B_i|A) = \dfrac{P(B_i)P(A|B_i)}{\sum_{j=1}^{n} P(B_j)P(A|B_j)}$$- $P(B_i)$:事前確率(情報を得る前の $B_i$ の確率)
- $P(B_i|A)$:事後確率($A$ を観測した後の $B_i$ の確率)
- $P(A|B_i)$:尤度($B_i$ のもとで $A$ が起こる確率)
ベイズの定理は「結果 $A$ を観測して、原因 $B_i$ の確率を更新する」公式である。
ベイズの定理のイメージ
「結果を見て、原因の確率をアップデートする」
例:陽性反応が出た → 本当に病気の確率は?
- 事前確率:病気の人の割合(検査前)
- 事後確率:検査結果を考慮した確率(検査後)
例:製品の不良品
工場Aと工場Bが製品を作っている。
- 工場Aは全体の60%を生産し、不良率は2%
- 工場Bは全体の40%を生産し、不良率は5%
ある製品が不良品だった。それが工場Aで作られた確率は?
解答
- $P(A) = 0.6$(工場Aで作られた確率)
- $P(B) = 0.4$(工場Bで作られた確率)
- $P(\text{不良}|A) = 0.02$
- $P(\text{不良}|B) = 0.05$
まず、不良品である確率を求める(全確率の公式):
$$P(\text{不良}) = 0.6 \times 0.02 + 0.4 \times 0.05 = 0.012 + 0.02 = 0.032$$ベイズの定理より:
$$P(A|\text{不良}) = \dfrac{0.6 \times 0.02}{0.032} = \dfrac{0.012}{0.032} = \dfrac{12}{32} = \dfrac{3}{8} = 0.375$$工場Aで作られた確率は37.5%。
例:DNA鑑定と冤罪 ― 「このことさえ知っていれば…」
実際にあった誤解
過去の裁判で「DNA鑑定で99.9%一致した!だから犯人だ!」という主張がなされたことがある。しかし、ベイズの定理を正しく適用すると、実際に犯人である確率は意外と低い場合がある。この知識があれば、冤罪を防げたかもしれない。
ある事件が起きた。容疑者のDNAを鑑定したところ、現場の証拠品と一致した。DNA鑑定の精度は次の通り:
- 犯人のDNAである場合、一致する確率:99.9%(感度)
- 無関係の人のDNAでも、偶然一致する確率:0.1%(偽陽性率)
この地域には100万人の住民がいて、犯人は1人である。DNA鑑定で一致した人が、本当に犯人である確率は?
多くの人の直感的な答え:「99.9%一致したのだから、99.9%の確率で犯人だ!」
しかし、実際は…
ベイズの定理による正しい計算
- $B_1$:この人が犯人である → $P(B_1) = \dfrac{1}{1{,}000{,}000}$(事前確率)
- $B_2$:この人は無関係 → $P(B_2) = \dfrac{999{,}999}{1{,}000{,}000}$
- $A$:DNA鑑定で一致した
- $P(A|B_1) = 0.999$(犯人なら一致)
- $P(A|B_2) = 0.001$(無関係でも偶然一致)
ベイズの定理より、DNA一致という結果を得たとき、この人が本当に犯人である確率は:
$$P(B_1|A) = \dfrac{P(B_1) \cdot P(A|B_1)}{P(B_1) \cdot P(A|B_1) + P(B_2) \cdot P(A|B_2)}$$数値を代入すると:
$$P(B_1|A) = \dfrac{\dfrac{1}{1{,}000{,}000} \times 0.999}{\dfrac{1}{1{,}000{,}000} \times 0.999 + \dfrac{999{,}999}{1{,}000{,}000} \times 0.001}$$分子と分母に $1{,}000{,}000$ を掛けて整理すると:
$$= \dfrac{0.999}{0.999 + 999.999} = \dfrac{0.999}{1000.998} \approx 0.00099800399 \approx 0.001 = 0.1\%$$答え:約0.1%(約1000分の1)
なぜ「DNA一致=99.9%犯人」ではないのか?
100万人の中で:
- 犯人(1人):99.9%の確率でDNA一致 → 約1人
- 無関係の人(999,999人):0.1%の確率で偶然一致 → 約1,000人
つまり、DNA鑑定で一致する人は約1,001人もいる!その中で本当の犯人はたった1人。
だから、DNA一致だけでは「1001人中の1人」つまり約0.1%の確率でしか犯人ではない。
教訓
- 検査の精度だけでは判断できない:「99.9%一致」は検査の精度であって、犯人である確率ではない。
- 事前確率(ベースレート)が重要:100万人中1人という事前確率を無視してはいけない。
- 偽陽性の数を考える:精度が高くても、母集団が大きければ偽陽性の絶対数は多くなる。
- 他の証拠との組み合わせ:DNA鑑定だけでなく、アリバイや動機などの他の証拠と総合的に判断すべき。
実際の裁判への影響
もし他に容疑を示す証拠(目撃証言、動機、現場にいた証拠など)があれば、事前確率は100万分の1よりはるかに高くなり、DNA一致によって犯人である確率は大幅に上がる。逆に、他に証拠がなくDNA一致だけでは、有罪とするには不十分である。ベイズの定理を理解していれば、証拠の正しい評価ができる。
5.7 独立事象
2つの事象AとBについて、Aが起こってもBの確率が変わらないとき、AとBは独立であるという。
2つの事象 $A$, $B$ が独立であるとは、
$$P(A \cap B) = P(A) \times P(B)$$が成り立つことをいう。
$P(A) > 0$, $P(B) > 0$ のとき、次は同値:
- $P(A \cap B) = P(A) \times P(B)$
- $P(B|A) = P(B)$
- $P(A|B) = P(A)$
(1) ⇔ (2) の証明:
条件付き確率の定義より、
$$P(B|A) = \dfrac{P(A \cap B)}{P(A)}$$$P(B|A) = P(B)$ が成り立つことと、
$$\dfrac{P(A \cap B)}{P(A)} = P(B) \iff P(A \cap B) = P(A) \times P(B)$$は同値である。
(1) ⇔ (3) も同様に示せる。
例:コインを2回投げる
1回目に表が出ることと、2回目に表が出ることは独立。
$$P(\text{2回とも表}) = \dfrac{1}{2} \times \dfrac{1}{2} = \dfrac{1}{4}$$独立でない例:くじ引き(戻さない)
10本のくじがあり、そのうち当たりが3本ある。このくじを戻さずに2本引く。
- $A$:1本目が当たり → $P(A) = \dfrac{3}{10}$
- $B$:2本目が当たり
1本目の結果によって2本目の確率が変わる:
- 1本目が当たりの場合:残り9本中、当たりは2本 → $P(B|A) = \dfrac{2}{9}$
- 1本目が外れの場合:残り9本中、当たりは3本 → $P(B|\overline{A}) = \dfrac{3}{9} = \dfrac{1}{3}$
$P(B|A) \neq P(B)$ なので、AとBは独立ではない。
対比:もし戻してから引く場合、1本目の結果に関わらず2本目の確率は常に $\dfrac{3}{10}$ なので、独立になる。
複数枚買っても期待値は同じ? ― 年末ジャンボ宝くじの例
宝くじのように「戻さない」抽選では、1枚目と2枚目の当選は独立ではない。しかし、意外なことに1枚あたりの期待値は変わらない。
具体例:年末ジャンボ宝くじ
年末ジャンボ宝くじは1枚300円で、還元率は約50%に設定されている(賞金総額が販売総額の約半分)。つまり、1枚あたりの期待値は約150円である。
1枚だけ買う場合
- 期待値:$E[X_1] = 150\text{円}$
- 期待利益:$150 - 300 = -150\text{円}$
2枚買う場合の2枚目の期待値
1枚目を買った後、2枚目を買う。1枚目の結果によって2枚目の当選確率は変わる(独立ではない)が、期待値はどうなるか?
実は、対称性により2枚目の期待値も150円。これは次のように理解できる:
- 発行された全ての宝くじは対称的(どの券も同じ立場)
- 1枚目だけが特別なわけではない
- 何枚目に買っても、1枚あたりの期待値は変わらない
結論:何枚買っても、1枚あたりの期待値は150円で変わらない!
なぜ期待値は変わらないのか?
これは期待値の線形性による。期待値の線形性は、事象が独立でなくても成り立つ:
$$E[X_1 + X_2] = E[X_1] + E[X_2]$$全体の賞金総額は決まっており、それが全ての券に対称的に分配される。だから、何枚買っても1枚あたりの期待値は同じになる。
たくさん買えば得する?
「たくさん買えば当たる確率が上がるから得だ」と思うかもしれないが、これは誤解である。
- 1枚買う:期待利益 = 150 - 300 = -150円
- 10枚買う:期待利益 = 1500 - 3000 = -1500円
- 100枚買う:期待利益 = 15000 - 30000 = -15000円
たくさん買えば当たる確率は上がるが、期待損失も枚数に比例して増えるだけである。
注意:独立と排反の違い
「独立」と「排反」はよく混同されるが、まったく異なる概念である。
| 概念 | 意味 | ベン図 | 公式 |
|---|---|---|---|
| 独立 | 一方が起きても他方に影響しない | 重なりあり(通常) | $P(A \cap B) = P(A) \times P(B)$ |
| 排反 | 同時に起きない | 重なりなし | $P(A \cap B) = 0$ |
重要な注意
排反な事象($P(A \cap B) = 0$)は独立ではない($P(B) > 0$ のとき)。
なぜなら、Aが起きたとわかったら、Bは絶対に起きないとわかるので、確率が変わってしまうから。
5.8 この章のまとめ
公式一覧
| 公式・概念 | 式 | 意味 |
|---|---|---|
| 条件付き確率 | $$P(A|B) = \dfrac{P(A \cap B)}{P(B)}$$ | Bが起こったときAが起こる確率 |
| 乗法定理 | $$P(A \cap B) = P(B) \times P(A|B)$$ | 両方起こる確率を2段階で計算 |
| 全確率の公式 | $$P(A) = \sum_{i} P(B_i)P(A|B_i)$$ | 場合分けして確率を足す |
| ベイズの定理 | $$P(B_i|A) = \dfrac{P(B_i)P(A|B_i)}{P(A)}$$ | 結果から原因の確率を逆算 |
| 独立事象 | $$P(A \cap B) = P(A) \times P(B)$$ | 互いに影響しない |
キーワード復習
条件付き確率
$P(A|B)$:Bが起こったときにAが起こる確率
乗法定理
同時に起こる確率を2段階で計算
全確率の公式
場合分けして確率を足し合わせる
ベイズの定理
結果から原因の確率を逆算
事前確率・事後確率
情報を得る前・後の確率
独立事象
一方が起きても他方の確率が変わらない
重要用語まとめ
📚 用語集を開く
- 条件付き確率 $P(A|B)$
- Bが起こったという条件のもとでAが起こる確率。Bを新しい全体として考える。
- 乗法定理
- $P(A \cap B) = P(B) \times P(A|B)$。AとBが両方起こる確率を2段階で計算する公式。
- 全確率の公式
- $P(A) = \sum_i P(B_i)P(A|B_i)$。場合分けして確率を足し合わせる公式。
- ベイズの定理
- $P(B_i|A) = \dfrac{P(B_i)P(A|B_i)}{P(A)}$。結果から原因の確率を逆算する公式。
- 事前確率
- 情報を得る前の確率。ベイズの定理では $P(B_i)$。
- 事後確率
- 情報(結果A)を得た後の確率。ベイズの定理では $P(B_i|A)$。
- 尤度(ゆうど)
- 原因 $B_i$ のもとで結果Aが起こる確率 $P(A|B_i)$。
- 独立事象
- $P(A \cap B) = P(A) \times P(B)$ が成り立つ事象。一方が起きても他方の確率が変わらない。
- 排反事象
- $P(A \cap B) = 0$。同時に起きない事象。独立とは異なる概念。
練習問題
問題1
サイコロを振って3以上だったとき、それが偶数である確率は?
問題2
トランプから2枚引く(戻さない)。1枚目がスペードだったとき、2枚目もスペードである確率は?
問題3
男子6人、女子4人から2人選ぶ。1人目が男子だったとき、2人目も男子である確率は?
問題4
ある病気の検査について:
- 人口の1%がその病気
- 病気の人が検査すると、99%の確率で陽性
- 病気でない人が検査すると、2%の確率で陽性(偽陽性)
検査で陽性だった人が実際に病気である確率は?
問題5(独立事象の判定)
サイコロを2回振る。次の事象について答えよ。
- $A$:1回目が偶数
- $B$:2回目が3以上
- $C$:目の和が7
(1) $A$ と $B$ は独立か?
(2) $A$ と $C$ は独立か?
問題1の解答
問題1の解答と解説
考え方:「3以上」という条件($B$)のもとで、「偶数」($A$)である確率を求める。
- $B$:3以上 → $\{3, 4, 5, 6\}$ の4通り
- $A$:偶数 → $\{2, 4, 6\}$
- $A \cap B$:3以上かつ偶数 → $\{4, 6\}$ の2通り
条件付き確率の定義より:
$$P(A|B) = \dfrac{P(A \cap B)}{P(B)} = \dfrac{2/6}{4/6} = \dfrac{2}{4} = \dfrac{1}{2}$$答え:$\dfrac{1}{2}$
問題2の解答
問題2の解答と解説
考え方:1枚目がスペードだったので、残りは51枚。そのうちスペードは12枚。
- 全トランプ:52枚(各スート13枚)
- 1枚目がスペード → 残り51枚
- 残りのスペード:13 - 1 = 12枚
答え:$\dfrac{4}{17}$
問題3の解答
問題3の解答と解説
考え方:1人目が男子なら、残りは9人でそのうち男子は5人。
- 最初:男子6人、女子4人(計10人)
- 1人目が男子 → 残り9人
- 残りの男子:6 - 1 = 5人
答え:$\dfrac{5}{9}$
問題4の解答
問題4の解答と解説
考え方:ベイズの定理を使う。陽性という「結果」から、病気という「原因」の確率を求める。
- $P(\text{病気}) = 0.01$(事前確率)
- $P(\text{陽性}|\text{病気}) = 0.99$(感度)
- $P(\text{陽性}|\text{健康}) = 0.02$(偽陽性率)
まず全確率の公式で、陽性になる確率を求める:
$$P(\text{陽性}) = 0.01 \times 0.99 + 0.99 \times 0.02 = 0.0099 + 0.0198 = 0.0297$$ベイズの定理より:
$$P(\text{病気}|\text{陽性}) = \dfrac{0.01 \times 0.99}{0.0297} = \dfrac{0.0099}{0.0297} \approx 0.333$$答え:約33%(約3人に1人)
重要:検査の精度が99%でも、病気の人が少ない(1%)ため、陽性でも実際に病気の確率は33%程度。事前確率の重要性を示す典型例。
問題5の解答
問題5の解答と解説
(1) $A$ と $B$ は独立か?
考え方:1回目と2回目は独立なので、$A$ と $B$ も独立。確認してみる:
- $P(A) = \dfrac{3}{6} = \dfrac{1}{2}$(1回目が偶数)
- $P(B) = \dfrac{4}{6} = \dfrac{2}{3}$(2回目が3以上)
- $P(A \cap B) = \dfrac{3}{6} \times \dfrac{4}{6} = \dfrac{12}{36} = \dfrac{1}{3}$
- $P(A) \times P(B) = \dfrac{1}{2} \times \dfrac{2}{3} = \dfrac{1}{3}$
$P(A \cap B) = P(A) \times P(B)$ なので、独立である。
(2) $A$ と $C$ は独立か?
考え方:和が7になるには特定の組み合わせが必要。1回目が偶数かどうかで確率が変わるか調べる。
- $P(C) = \dfrac{6}{36} = \dfrac{1}{6}$(和が7:(1,6),(2,5),(3,4),(4,3),(5,2),(6,1)の6通り)
- $P(A \cap C)$:1回目が偶数かつ和が7 → (2,5),(4,3),(6,1)の3通り → $\dfrac{3}{36} = \dfrac{1}{12}$
- $P(A) \times P(C) = \dfrac{1}{2} \times \dfrac{1}{6} = \dfrac{1}{12}$
$P(A \cap C) = P(A) \times P(C)$ なので、独立である。
なぜ独立になるのか:1回目の目が偶数か奇数かにかかわらず、2回目の目を適切に選べば和を7にできる。具体的には、1回目が2なら2回目は5、1回目が4なら2回目は3、1回目が6なら2回目は1。どの場合も確率は同じ$\dfrac{1}{6} \times \dfrac{1}{6} = \dfrac{1}{36}$。よって全体では$\dfrac{3}{36} = \dfrac{1}{12}$。
同様に、1回目が奇数の場合(1,3,5)でも、それぞれ2回目を適切に選べば(6,4,2)和が7になり、確率は同じ$\dfrac{3}{36} = \dfrac{1}{12}$。このように、1回目が偶数でも奇数でも和が7になる確率は変わらない(対称性による)。