信号生成

信号生成は、テスト・計測・通信・音声合成など多くの分野で必要とされる基盤技術である。 ここでは、基本波形の生成から雑音生成、変調方式、DDS(直接ディジタル合成)までを体系的に解説する。

基本波形

信号処理やテストで頻繁に使われる基本的な波形を紹介する。

表1: 基本波形の一覧
波形 数式 用途
正弦波 $x(t) = A\sin(2\pi f t + \phi)$ 基準信号、変調の搬送波
矩形波 $x(t) = A\,\mathrm{sgn}(\sin(2\pi f t))$ クロック信号、ディジタル回路
三角波 $x(t) = \frac{2A}{\pi}\arcsin(\sin(2\pi f t))$ PWM変調、スイープ信号
のこぎり波 $x(t) = A\left(\frac{t}{T} - \lfloor\frac{t}{T}\rfloor\right)$ シンセサイザー、走査信号
インパルス $x[n] = \delta[n]$ システム同定、インパルス応答測定

雑音生成

雑音(ノイズ)は統計的テスト、ディザリング、音響測定など多くの場面で必要となる。

表2: 主要な雑音の種類
雑音 パワースペクトル密度 特徴
ホワイトノイズ $S(f) = \mathrm{const.}$ 全帯域均一、理論解析の基準
ピンクノイズ($1/f$) $S(f) \propto 1/f$ オクターブ等エネルギー、音響測定
ブラウンノイズ($1/f^2$) $S(f) \propto 1/f^2$ ランダムウォーク、低周波成分優勢

チャープ信号・スイープ信号

周波数が時間とともに変化する信号である。 システムの周波数応答測定やレーダーのパルス圧縮に用いられる。

  • 線形チャープ — 周波数が時間に対して線形に変化: $x(t) = \sin\!\bigl(2\pi(f_0 t + \tfrac{k}{2}t^2)\bigr)$
  • 対数チャープ — 周波数が対数的に変化。音響測定で広帯域の応答を効率的に取得

DDS(直接ディジタル合成)

DDS (Direct Digital Synthesis) は、位相アキュムレータと波形メモリ(ルックアップテーブル)を用いて高精度に波形を生成する技術である。 基準クロック $f_{\mathrm{clk}}$ で動作する $N$ ビットの位相アキュムレータに、周波数制御ワード $\Delta P$ を毎クロック累積加算し、その上位ビットで正弦波テーブルを参照することで所望の波形を得る。

  • 出力周波数: $f_{\mathrm{out}} = \dfrac{\Delta P}{2^N} f_{\mathrm{clk}}$
  • 周波数分解能: $\Delta f = f_{\mathrm{clk}} / 2^N$(非常に細かい)
  • 周波数切り替え: $\Delta P$ を変更するだけで瞬時に周波数が変化

通信機器の局部発振器、計測器の信号源、ソフトウェア無線(SDR)などに広く応用される。

変調方式

搬送波に情報信号を乗せる変調は、通信やオーディオで基本的な信号生成技術である。

  • AM(振幅変調) — 搬送波の振幅を情報信号で変化させる
  • FM(周波数変調) — 搬送波の周波数を情報信号で変化させる。FM合成はシンセサイザーでも活用
  • PM(位相変調) — 搬送波の位相を情報信号で変化させる

参考資料