Z変換 初級
性質と逆変換(大学1-2年レベル)
初級の概要
入門では片側Z変換の定義と基本的な変換公式、伝達関数・極の概念を学んだ。初級では、Z変換の理論的な基盤をより深く理解する。複素変数 $z$ の意味、収束領域(ROC)の概念、両側Z変換と因果性・安定性の関係、畳み込み、逆変換の技法、初期値・最終値定理を学ぶ。
学習目標
- 複素変数 $z$ の極形式表現と DTFT との関係を理解する
- Z変換の線形性、時間シフト性を活用できる
- 収束領域(ROC)と両側Z変換を理解する
- 部分分数分解による逆Z変換ができる
- 因果性・安定性とROCの関係を理解する
- 初期値定理・最終値定理を応用できる
目次
-
第1章
Z変換の性質
複素変数 $z$ の意味、DTFT との関係、z領域微分、スケーリング、時間反転、共役、畳み込み
-
第2章
収束領域(ROC)
級数の収束、ROCの形状、両側Z変換、因果・反因果信号の対比
-
第3章
畳み込み定理
離散畳み込み定理、LTIシステム、伝達関数、直列・並列接続
-
第4章
逆Z変換
部分分数分解、べき級数展開
-
第5章
初期値定理・最終値定理
逆変換せずに初期値・定常値を求める
前提知識
- Z変換 入門の内容(片側Z変換の定義、基本的な変換公式、伝達関数と極)
- 複素数の演算(極形式 $z = re^{j\omega}$)
- 部分分数分解
読み物
-
漸化式を代数に変える [読み物]
次の項が前の項で決まる漸化式を、Z変換でまるごと一本の式に押し込めると、未来の項が代数だけで取り出せる。フィボナッチ数列と母関数を題材に、その爽快さを肩の力を抜いて語る。
-
音を作りかえる小さな仕掛け [読み物]
ノイズをならす移動平均と、やまびこを生むエコー。身近な二つの効果を入り口に、過去の値を混ぜて音を作りかえるデジタルフィルタの仕組みと、それがなぜ z の式できれいに書けるのかを語る。
-
単位円をひとめぐり [読み物]
なぜ z は複素数で、単位円だけが特別扱いされるのか。z を半径と角度に分けると、半径が増減を、角度が周波数を語っていた。回転と周波数のつながりを、サンプリングの話を交えて肩の力を抜いて語る。
よくある質問
Q1. Z変換の収束領域(ROC)とは何か
Z変換 $X(z) = \sum x[n] z^{-n}$ が収束する $z$ の範囲を収束領域(ROC)という。因果信号では $|z| > R$ の形(円の外側)、反因果信号では $|z| < R$ の形(円の内側)、両側信号では $R_1 < |z| < R_2$ のリング領域となる。同じ $X(z)$ でも ROC が異なれば異なる信号に対応するため、両側Z変換では ROC の指定が不可欠である。
Q2. 逆Z変換はどのように求めるか
実用上最も多く使われる方法は部分分数分解である。$X(z)/z$ を部分分数に分解し、各項を既知のZ変換ペア(例: $z/(z-a) \leftrightarrow a^n u[n]$)と照合して時間領域の信号を求める。べき級数展開(長除法)による方法もある。
Q3. Z変換における安定性の条件は何か
離散時間システムが BIBO 安定(有界入力有界出力安定)であるためには、そのインパルス応答のZ変換 $H(z)$ の ROC が単位円 $|z| = 1$ を含む必要がある。因果システムの場合、これはすべての極が単位円の内側($|z| < 1$)にあることと等価である。