第3章: 数列の極限

「近づく」の意味

このページの目標

  • 数列の収束・発散・振動を直感的に理解する
  • 厳密な定義(ε-N 論法)への準備をする

1. 収束の直感的イメージ

数列 $\{a_n\}$ が $L$ に収束するとは、$n$ を大きくしていくと $a_n$ が $L$ に「いくらでも近づける」ことである。

例:$a_n = 1 + \frac{1}{n}$

$a_1 = 2$, $a_2 = 1.5$, $a_3 \approx 1.33$, $a_{10} = 1.1$, $a_{100} = 1.01$, ...

$n$ を大きくすると $a_n$ は $1$ にいくらでも近づく。$\displaystyle\lim_{n \to \infty} \left(1 + \frac{1}{n}\right) = 1$

n aₙ 2 1 L=1 ε N ε 以内に収まる
図1: $a_n = 1 + 1/n$ の収束($n \geq N$ で全ての点が ε 帯に入る)

2. 「いくらでも近づける」とは

$1 + \frac{1}{n}$ が $1$ に近づくとは、具体的に何を意味するか:

  • $|a_n - 1| < 0.1$ にしたい → $n \geq 11$ で達成
  • $|a_n - 1| < 0.01$ にしたい → $n \geq 101$ で達成
  • $|a_n - 1| < 0.001$ にしたい → $n \geq 1001$ で達成

どんなに小さい正の数 $\varepsilon$ を指定されても、それに応じた $N$ が必ず見つかり、$n \geq N$ ならば $|a_n - 1| < \varepsilon$ が成り立つ。この「任意の $\varepsilon$ に対して $N$ が存在する」という構造が、ε-N 論法の核心である。

3. 発散と振動

発散の例:$a_n = n$

$a_1 = 1$, $a_2 = 2$, $a_3 = 3$, ...

$n$ を大きくすると $a_n$ はどこまでも大きくなる。どの値 $L$ にも近づかない。

振動の例:$a_n = (-1)^n$

$a_1 = -1$, $a_2 = 1$, $a_3 = -1$, $a_4 = 1$, ...

$-1$ と $1$ を繰り返し、どの値にも近づかない。

n aₙ 発散 (n → ∞) n aₙ 振動 ((-1)ⁿ)
図2: 発散(左)と振動(右)の例

まとめ

  • 収束:ある値にいくらでも近づける
  • 発散:どこまでも大きくなる(または小さくなる)
  • 振動:一定の値に落ち着かない
    ※ 厳密には「収束しないこと」を発散といい、振動も発散の一種である。ここでは直感的に分類している。
  • 厳密な定義は「任意の $\varepsilon$ に対して...」という形式で与えられる