フーリエ解析 中級
大学3-4年レベル
この章で学ぶこと
中級編では、フーリエ変換を導入し、非周期関数を含む連続スペクトルの世界へ進む。畳み込み定理、サンプリング定理といった連続フーリエの基礎を学ぶ。離散版 (DFT・FFT) は 数値解析 上級 シリーズに集約されている。
前提知識
- 初級編の内容(フーリエ級数、複素フーリエ級数)
- 複素解析の基礎(複素関数、留数)
- 広義積分の収束
目次
本編
- 1 フーリエ変換の定義 非周期関数への拡張、連続スペクトルの概念
- 2 フーリエ変換の性質 線形性、シフト、スケーリング、微分・積分との関係
- 3 重要なフーリエ変換 ガウス関数、矩形関数、デルタ関数のフーリエ変換
- 4 畳み込み定理 畳み込みの定義、畳み込み定理とその応用
- 5 標本化定理(シャノンの定理) 帯域制限信号の復元条件、デルタ関数による証明、sinc補間、臨界サンプリング、エイリアシング
- 6 離散フーリエ変換 (→ 数値解析 上級 へ移管) DFT の定義と性質、巡回畳み込み定理。離散版は数値計算の文脈で扱う。
- 7 高速フーリエ変換 (→ 数値解析 上級 へ移管) FFT アルゴリズム群と計算量削減。Cooley-Tukey、Bluestein、NTT は数値解析 上級で深掘りする。
- 8 窓関数とスペクトル漏れ 有限長データの扱い、各種窓関数の特性
補足
- 畳み込み定理(詳説) 畳み込み定理の厳密な証明、離散版、FFTによる高速畳み込み
- パワースペクトル パワースペクトル密度の定義、ウィーナー=ヒンチンの定理、推定法、応用
- マルチレート信号処理とオーディオ規格 オーバーサンプリング、デシメーション、補間、ADC設計、CD/DAT/ハイレゾ規格比較
- プランシュレルの定理 フーリエ変換のエネルギー保存則、パーセバルの等式との関係、DFTのユニタリ性
- アダマール変換 ±1からなる直交変換、アダマール行列の再帰構成、高速アダマール変換、CDMA・画像圧縮
- ウォルシュ関数 ±1の矩形波からなる完全直交系、シーケンシー、ウォルシュ=アダマール変換
- 矩形関数 箱型関数 rect、フーリエ変換がsincになる双対性、窓関数・理想低域通過フィルタ
- ハール関数(ハールウェーブレット) 最初の直交ウェーブレット、多重解像度解析、画像圧縮・エッジ検出
- ハートレー変換 cas関数による実数値変換、フーリエ変換との関係、高速ハートレー変換
到達目標
- フーリエ変換の定義と基本性質を理解する
- 重要な関数のフーリエ変換を計算できる
- 畳み込み定理を応用問題に適用できる
- サンプリング定理の意味と限界を理解する
- 窓関数の役割と選び方を理解する
よくある質問
フーリエ解析の中級編では何を学ぶか
フーリエ変換の定義と性質(線形性・平行移動・スケーリング・微分・畳み込み定理)、パーセバル等式、サンプリング定理、窓関数によるスペクトル漏れの扱いを学ぶ。離散フーリエ変換(DFT)と高速フーリエ変換(FFT)は数値解析 上級シリーズに集約されている。
畳み込み定理とはどのような定理か
「2つの関数の畳み込みのフーリエ変換は、各関数のフーリエ変換の積に等しい」という定理である。$\mathcal{F}[f*g] = \hat{f}\cdot\hat{g}$。畳み込みという「重い計算」をフーリエ変換後の「掛け算」に変換できるため、線形時不変システムの解析・フィルタ設計・数値計算(FFT による多項式乗算)で重要となる。
サンプリング定理とは何か
帯域制限信号 $f(t)$ がナイキスト周波数 $f_s/2$ 以下の成分のみを持つとき、サンプリング周期 $T = 1/f_s$ で離散化しても原信号を完全に復元できる、というシャノンの定理である。sinc 補間によって連続信号が再構成される。連続フーリエと離散信号の橋渡しになる重要な定理で、$f_s/2$ を超える成分があるとエイリアシングが発生する。
読み物
- 時間と周波数のあいだの取引 [読み物] 「いつ鳴ったか」と「どの高さか」は同時に正確には決められない。楽譜・窓関数から信号の不確定性原理まで、時間と周波数のトレードオフを肩の力を抜いて語る。
- 混ぜる技術 [読み物] 写真のぼかし・こだまの残響・移動平均は、じつは同じ「畳み込み」だった。重ねる計算を掛け算に変える畳み込み定理と、周波数の世界で描くフィルタ設計の気持ちよさを語る。
- 変換しても変わらない形 [読み物] あの鐘形のベル・カーブ=ガウス関数は、フーリエ変換しても形が変わらない。なぜこの形だけが自分自身に化けるのか。中心極限定理・熱の拡散・不確定性の最良形まで、変換が動かせない一つの形をめぐる物語を語る。