ラドン変換
Radon Transform
このシリーズについて
ラドン変換は、関数をその直線積分(線積分)の集まりに変換する操作である。1917年にヨハン・ラドンによって導入され、現代ではX線CTスキャンや地震探査などの画像再構成技術の数学的基盤となっている。
本シリーズでは、ラドン変換の数学的定義から始め、フーリエスライス定理、逆変換、そしてフィルタ補正逆投影法まで段階的に学習する。
ラドン変換の定義
$$\mathcal{R}f(s, \theta) = \int_{-\infty}^{\infty} f(s\cos\theta - t\sin\theta, s\sin\theta + t\cos\theta) \, dt$$ここで $\theta$ は直線の法線方向の角度、$s$ は原点から直線までの符号付き距離、$t$ は直線に沿った座標である。被積分関数の引数は
$$(x, y) = \underbrace{s(\cos\theta, \sin\theta)}_{\text{原点から法線方向へ } s} + \underbrace{t(-\sin\theta, \cos\theta)}_{\text{直線に沿って移動}}$$という直線のパラメータ表示にほかならない。つまりラドン変換は、法線方向が角度 $\theta$、原点からの符号付き距離が $s$ である直線を $t$ で走らせ、その上で $f$ を積分したものである。
レベル別学習
学習の流れ
関連トピック
- X線CTイメージング - ラドン変換の代表的応用(CT画像再構成の理論と実装)
- フーリエ解析 - フーリエスライス定理の基盤
- 関数解析 - ラドン変換の関数空間論
よくある質問
Q1. ラドン変換とは何ですか?
ラドン変換は、2次元の関数をその直線に沿った線積分の集まりに変換する操作です。1917年にヨハン・ラドンによって導入されました。法線方向の角度が $\theta$、原点からの符号付き距離が $s$ である直線に沿って関数を積分し、得られた値 $\mathcal{R}f(s,\theta)$ を $(s,\theta)$ 平面上に画像として並べたものをサイノグラムと呼びます。点状の物体が $s = x\cos\theta + y\sin\theta$ という正弦波状の軌跡を描くことが、その名前の由来です。
Q2. ラドン変換はどのような分野で使われますか?
最も代表的な応用はX線CTスキャンです。理想化したモデルでは、検出器が測る透過X線の強度そのものではなく、それを対数変換して得られる投影データが、体内のX線減弱係数のラドン変換に対応します。この関係を逆にたどる逆ラドン変換の考え方にもとづいて断面画像を再構成し、その代表的な方法がフィルタ補正逆投影法(FBP)です。他にも地震探査、電子顕微鏡トモグラフィー、核医学(PET/SPECT)などで使われています。
Q3. フーリエスライス定理とは何ですか?
フーリエスライス定理(投影切断面定理)は、角度 $\theta$ の投影データを $s$ について1次元フーリエ変換すると、元の2次元関数の2次元フーリエ変換を、原点を通る角度 $\theta$ の直線上で評価した値に一致する、という定理です。この定理はCTスキャンの画像再構成アルゴリズム(フィルタ補正逆投影法)の理論的基盤となっています。