積分 初級
初級(大学1-2年レベル)リーマン積分・広義積分・重積分
初級の概要
初級では、大学数学の積分論の基礎を学ぶ。入門編が計算技法を中心に扱うのに対し、本ページ以降ではリーマン積分の厳密な定義、無限区間や不連続点を含む広義積分、多変数関数の重積分、そして変数変換(ヤコビアン)までを数学的に厳密に扱う。
学習目標
- リーマン積分の定義と可積分条件を理解する
- 広義積分の収束・発散を判定できる
- 二重積分・三重積分を計算できる
- 変数変換を用いてヤコビアンを計算する
目次
関連用語
- 関数の平均値 — 関数の平均値(mean value of a function)の公式 (1/(b-a))∫f を基礎レベルで解説する
- 三角置換 — 三角置換(Trigonometric Substitution)による積分の手法を解説する
- ワイエルシュトラス置換 — ワイエルシュトラス置換(Weierstrass Substitution)t=tan(x/2) により三角関数の…
- シェル法(殻法) — シェル法(Shell Method、バウムクーヘン積分)による回転体の体積の求め方を解説する
- ワッシャー法 — ワッシャー法(Washer Method)による回転体の体積の求め方を解説する
- パップス・ギュルダンの定理 — パップス・ギュルダンの定理(Pappus's Centroid Theorem)を解説する
- 極座標での面積 — 極座標での面積の公式 A = (1/2)∫r²dθ を解説する
前提知識
- 積分 入門の内容
- 多変数関数の微分(偏微分)
- 行列式の基礎
基本概念
リーマン和
分割$P = \{x_0, x_1, \ldots, x_n\}$と各小区間の標本点$\xi_i \in [x_{i-1}, x_i]$に対し:
$$S(f, P) = \displaystyle\sum_{i=1}^{n} f(\xi_i)(x_i - x_{i-1})$$分割の幅$|P| = \max_i (x_i - x_{i-1})$を$0$に近づけたとき、標本点$\xi_i$の取り方によらず$S(f,P)$が同じ値$I$に収束するなら、$f$は$[a,b]$上でリーマン可積分であるといい、$\int_a^b f(x)\,dx = I$と定める。
フビニの定理
$f$が矩形$D = [a,b] \times [c,d]$上で連続なら:
$$\iint_D f(x,y)\,dA = \displaystyle\int_a^b \left(\displaystyle\int_c^d f(x,y)\,dy\right)dx = \displaystyle\int_c^d \left(\displaystyle\int_a^b f(x,y)\,dx\right)dy$$$f$が$D$上でリーマン可積分というだけでは、内側の積分がすべての$x$について存在するとは限らない(例:$x = 1/2$ かつ $y$ が有理数のときだけ $1$ となる関数は $D$ 上で可積分だが、$x = 1/2$ での内側の積分は存在しない)。より一般の形は中級以降で扱う。
変数変換公式
$T$が$C^1$級で、内部で1対1、かつヤコビアンが消えないとき、$(x,y) = T(u,v)$に対して:
$$\iint_D f(x,y)\,dx\,dy = \iint_{T^{-1}(D)} f(T(u,v)) \left|\dfrac{\partial(x,y)}{\partial(u,v)}\right| du\,dv$$ヤコビアン$\left|\dfrac{\partial(x,y)}{\partial(u,v)}\right|$は面積の拡大率
読み物
- 微分と積分は双子だった ― 基本定理という橋 [読み物] — 面積を求める積分と傾きを求める微分が、なぜ逆演算になるのか。微分積分学の基本定理という橋がもたらした奇跡を、歴史と直感で語る。
- 針を投げて円周率を測る ― ビュフォンの針と積分 [読み物] — 床に針を放るだけで円周率πが現れる不思議を、「確率=全パターンの平均=積分」という視点から、モンテカルロ法の源流まで語る。
- ペンキで塗れないラッパ ― 体積は有限、表面積は無限の不思議 [読み物] — y=1/x を回したラッパ形の立体は、容積は有限なのに表面積は無限。この有名なパラドックスを、広義積分の収束と発散という視点から語る。
よくある質問
積分学初級では何を学ぶか
リーマン積分の定義と可積分条件、広義積分(無限区間・不連続関数)の収束・発散、多変数積分(重積分)の基礎とフビニの定理、変数変換とヤコビアンを学ぶ。置換積分・部分積分などの計算技法は入門編で扱うので既習とし、初級では積分の理論的基礎と多変数への拡張を扱う。
初級の積分は入門の積分と何が違うか
入門では不定積分・定積分の計算技法(置換積分・部分積分など)を中心に学ぶ。初級ではそれらを前提に、リーマン積分の厳密な定義と可積分条件、広義積分の収束・発散、そして多変数の重積分とフビニの定理・変数変換(ヤコビアン)を扱う。計算だけでなく積分の理論的基礎に踏み込む点が入門との違いである。
リーマン積分の限界とルベーグ積分との違いは何か
有界な関数がリーマン可積分であることは、その不連続点全体の集合が測度0であることと同値である(ルベーグの判定条件)。したがってリーマン積分が扱えるのは「連続性に近い」関数に限られ、すべての点で不連続なディリクレ関数はリーマン非可積分である。ルベーグ積分は測度論に基づき、測度0の集合の上で関数の値を変えても積分値は変わらないという柔軟さを持ち、優収束定理・単調収束定理により解析学の難しい問題を扱える。