ラプラス変換 入門

定義と基本変換(大学1年レベル)

入門の概要

時間領域 f(t) ラプラス変換 s領域(複素数) F(s) Re Im 線形常微分方程式が s の代数方程式になる
\(\displaystyle\int_{0}^{\infty} f(t)\, e^{-st}\, dt\)
図 1: ラプラス変換の概念。時間領域の関数 $f(t)$ を $s$ 領域の関数 $F(s)$ に変換する。$s$ 領域の ✕ 印は極の例である。ラプラス変換や伝達関数が有理関数として書けるとき、このような「極」が現れる。詳しくは以降の章で扱う。

入門では、ラプラス変換の基本的な考え方を学ぶ。「時間の関数を複素数の関数に変換する」という操作が何を意味するのか、直感的に理解することを目指す。

学習目標

  • ラプラス変換の定義を理解する
  • 指数関数 $e^{-st}$ の役割を理解する
  • 基本的な関数のラプラス変換を計算できる
  • 変換表を使えるようになる
  • ラプラス変換の応用先を知る

目次

  1. 第1章 ラプラス変換とは

    変換の動機、定義、直感的な意味

  2. 第2章 指数関数との関係

    $e^{-st}$ の意味、収束条件

  3. 第3章 基本関数の変換

    $1$, $t$, $t^n$, $e^{at}$ の変換

  4. 第4章 三角関数の変換

    $\sin(at)$, $\cos(at)$ の変換

  5. 第5章 変換表と使い方

    主要な変換の一覧、逆引きの方法

  6. 第6章 応用の概観

    微分方程式、回路解析、制御理論への応用

前提知識

  • 微分積分の基礎(積分の計算)
  • 指数関数・対数関数の性質
  • 複素数の基礎(あれば望ましい)

よくある質問

ラプラス変換とはどのような変換ですか?

ラプラス変換は関数 $f(t)$($t\geq 0$)を $F(s)=\int_0^\infty f(t)e^{-st}dt$ で定義される複素関数 $F(s)$ に変換します。微分が $\mathcal{L}\{f'(t)\}=sF(s)-f(0)$ のように「$s$ 倍と初期値」からなる代数式に変わるため、常微分方程式(ODE)を代数方程式として扱えます。フーリエ変換とは密接に関係しますが、この片側の定義で $s=j\omega$ と置いて得られるのは $\int_0^\infty f(t)e^{-j\omega t}dt$ で、これは $t<0$ で $f(t)=0$ とみなした因果信号のフーリエ変換にあたります(虚軸が収束域に含まれるとき)。積分区間を $-\infty$ から取る両側ラプラス変換なら、フーリエ変換は虚軸 $s=j\omega$ 上の値としてそのまま得られます。

ラプラス変換の主な応用分野は何ですか?

制御工学(伝達関数 $H(s)=Y(s)/U(s)$、ナイキスト安定判別法、周波数応答)、信号処理(フィルタの周波数特性解析)、電気回路(RLC回路の過渡応答・インピーダンス計算)、微分方程式の解析(初期値問題の系統的解法)などで広く使われます。

フーリエ変換との違いは何ですか?

素朴な積分の形では、フーリエ変換 $\hat{f}(\omega)=\int_{-\infty}^{\infty} f(t)e^{-j\omega t}dt$ は実数全体で可積分な関数に対して導入されます($L^2$ 関数への Plancherel の意味での拡張や、超関数への拡張もありますが、入門の範囲を越えます)。一方ラプラス変換 $F(s)=\int_0^\infty f(t)e^{-st}dt$ は $s=\sigma+j\omega$ の実部による減衰因子 $e^{-\sigma t}$ を含むため、指数関数的に増大する関数や、$t=0$ から始まる因果信号も扱えます。

ラプラス変換と z 変換の関係は何ですか?

Z変換は、ラプラス変換に対応する離散時間信号のための変換です。連続時間系を周期 $T$ で標本化して考えると $z=e^{sT}$ という対応が現れ、$s$ 平面の左半平面は $z$ 平面の単位円の内部に写ります。連続系の安定条件(左半平面の極)が離散系では $|z|<1$(単位円内)になるのは、このためです。

読み物

  1. 微分を掛け算に変える魔法 [読み物]

    やっかいな微分や積分が、なぜ易しい掛け算・割り算に化けるのか。ラプラス変換を「解析を代数に変える道具」として、肩の力を抜いて語る。

  2. スイッチを入れた瞬間 [読み物]

    スイッチを入れた直後、なぜものごとはすぐに落ち着かないのか。過渡現象という「立ち上がり」を、ステップ入力とインパルス入力という二つの理想化を通して語る。

  3. 視点を変えるという技術 [読み物]

    難しい問題も、見る角度を変えると驚くほど易しくなる。影絵、対数、地図、楽譜――身近な「視点の変換」を入口に、ラプラス変換という発想の正体を肩の力を抜いて語る。