数論入門
Introduction to Number Theory
入門(高校数学レベル)
この章について
数論入門では、整数の基本的な性質を学ぶ。約数と倍数の関係、素数の概念、そして2000年以上前から知られているユークリッドの互除法まで、数論の基礎を固める。
前提知識
- 自然数の四則演算(小学校レベル)
目次
1. 整数の性質
整数の定義と基本性質。自然数、整数、有理数の関係。
- 整数とは何か
- 整数の順序関係
- 整数の演算と性質
2. 約数と倍数
整除の概念と約数・倍数の関係。
- 整除の定義 $a \mid b$
- 約数の列挙
- 倍数の性質
3. 素数と合成数
素数の定義と基本的な性質。
- 素数の定義
- 素数の無限性(ユークリッドの証明)
- エラトステネスの篩
4. 素因数分解
算術の基本定理と素因数分解の一意性。
- 素因数分解の存在
- 算術の基本定理
- 素因数分解の応用
5. 最大公約数と最小公倍数
GCDとLCMの定義と計算法。
- 最大公約数 $\gcd(a, b)$
- 最小公倍数 $\mathrm{lcm}(a, b)$
- $\gcd \times \mathrm{lcm} = ab$ の関係
6. ユークリッドの互除法
最大公約数を効率的に求めるアルゴリズム。
- 互除法の原理
- アルゴリズムの実行
- 拡張ユークリッドの互除法
7. 1次不定方程式
$ax + by = c$ の整数解。
- 解の存在条件
- 特殊解の求め方
- 一般解の表現
8. 演習問題
理解を深めるための練習問題。
- 基本問題
- 応用問題
- 大学入試問題
主要な定理
算術の基本定理
任意の正整数 $n > 1$ は、素数の積として一意的に表される(順序を除く)。
$$n = p_1^{e_1} p_2^{e_2} \cdots p_k^{e_k}$$ユークリッドの定理
素数は無限に存在する。
ベズーの等式
整数 $a, b$ に対して、$\gcd(a, b) = d$ ならば、$ax + by = d$ を満たす整数 $x, y$ が存在する。
このレベルで理解できる応用
チェックディジット
ISBN(書籍コード)、JANコード(バーコード)、クレジットカード番号などには検査用の数字が付いている。これは剰余演算で計算され、入力ミスを検出する。例えばISBN-13では、各桁に1と3を交互にかけて足し合わせ、その和が10で割り切れるようにチェックディジットが決まる。
カレンダー計算
ある日付が何曜日かを求める公式(ツェラーの公式など)は、7を法とする剰余演算を使う。「今日から100日後は何曜日?」も $(100 \mod 7) = 2$ なので2日後の曜日とわかる。
時計算術
12時間制の時計は自然に「12を法とする合同式」になっている。「今9時、15時間後は?」は $(9 + 15) \mod 12 = 0$、つまり12時。これは合同式の最も身近な例。
パズル・ゲーム
数独の解の存在や、「川渡り問題」「水差し問題」などの古典パズルは、GCDや整除性で解析できる。例えば「5リットルと3リットルの容器で4リットルを量る」は $\gcd(5, 3) = 1$ が4を割るので可能。
学習のポイント
- 整除性の理解:「$a$ が $b$ を割り切る」という関係を正確に把握する
- 素数の重要性:素数が整数論において果たす基本的な役割を理解する
- アルゴリズム的思考:ユークリッドの互除法を通じて、計算の効率性を学ぶ
- 存在と一意性:数学的な証明における「存在」と「一意性」の違いを意識する