三角関数の基本恒等式の証明

概要

三角関数の基本恒等式 $\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$ は、三角関数において最も基本的かつ重要な関係式である。 この恒等式はピタゴラスの恒等式(Pythagorean identity)とも呼ばれる。

本ページでは、単位円による三角関数の定義を採用する。この定義により、基本恒等式は定義から直ちに従い、かつ任意の実数 $\theta$ に対して成り立つことが明確になる。

単位円による定義と基本恒等式

三角関数の定義

P(x, y) x y θ r = 1 x y O 1 1

図1: 単位円と三角関数の定義

定義:三角関数(単位円による)

単位円 $x^2 + y^2 = 1$ 上で、$x$ 軸の正の方向から反時計回りに角度 $\theta$ だけ回転した位置にある点を $P = (x, y)$ とする。このとき:

$$\cos\theta \triangleq x, \quad \sin\theta \triangleq y$$

この定義は任意の実数 $\theta$ に対して適用できる。

基本恒等式

点 $P = (\cos\theta, \sin\theta)$ は単位円 $x^2 + y^2 = 1$ 上にあるから、定義より直ちに:

三角関数の基本恒等式

$$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$$

すべての実数 $\theta$ に対して成り立つ。

ポイント:単位円による定義を採用すると、基本恒等式は「証明」を必要としない。単位円の方程式 $x^2 + y^2 = 1$ そのものが、$\cos^2\theta + \sin^2\theta = 1$ を表しているからである。

直角三角形による解釈(鋭角の場合)

$0 < \theta < \frac{\pi}{2}$(鋭角)の場合、単位円による定義は直角三角形の辺の比として解釈できる。この見方は高校数学で馴染みがあり、幾何学的直感を与えてくれる。

θ b a c A B C

図2: 直角三角形 ABC(∠B = 90°)

直角三角形との対応

直角三角形において、斜辺を $c$、角 $\theta$ の隣辺を $a$、対辺を $b$ とすると:

\begin{align} \sin\theta &= \frac{\color{#4CAF50}{b}}{\color{#E91E63}{c}} = \frac{\color{#4CAF50}{\text{対辺}}}{\color{#E91E63}{\text{斜辺}}} \\ \cos\theta &= \frac{\color{#FF9800}{a}}{\color{#E91E63}{c}} = \frac{\color{#FF9800}{\text{隣辺}}}{\color{#E91E63}{\text{斜辺}}} \end{align}

これは単位円の定義と一致する。単位円上で考えると、半径(斜辺)が $1$ なので、$\cos\theta$ と $\sin\theta$ はそれぞれ隣辺と対辺の長さそのものになる。

ピタゴラスの定理からの導出

直角三角形に対するピタゴラスの定理 $a^2 + b^2 = c^2$ を用いると:

\begin{eqnarray*} \sin^2\theta + \cos^2\theta &=& \left(\frac{b}{c}\right)^2 + \left(\frac{a}{c}\right)^2 \\ &=& \frac{a^2 + b^2}{c^2} = \frac{c^2}{c^2} = 1 \end{eqnarray*}

これにより、基本恒等式が「ピタゴラスの恒等式」と呼ばれる理由が理解できる。

注意:直角三角形による解釈は鋭角 $0 < \theta < \frac{\pi}{2}$ に直接適用できる。一般の角度では各象限における符号を考慮する必要があるが、$\sin^2\theta + \cos^2\theta$ では符号が消えるため、結果は同じである。

まとめ

ピタゴラスの恒等式一覧

$$\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1$$ $$\tan^2\theta + 1 = \sec^2\theta$$ $$1 + \cot^2\theta = \csc^2\theta$$

参考文献