正弦螺旋
Sinusoidal Spiral
中級(高校数学〜学部初年)
このページの目標
正弦螺旋の極座標方程式 $r^n = a^n \sin(n\theta)$ を理解し、指数 $n$ によって現れる古典的曲線の特殊形を把握する。
1. 定義と極座標方程式
正弦螺旋の定義
定数 $a > 0$、実数 $n \neq 0$ に対して極座標 $(r, \theta)$ で
$$r^n = a^n \sin(n\theta) \tag{1}\label{eq:def}$$と表される曲線を正弦螺旋という。$\sin$ を $\cos$ に置き換えた $r^n = a^n \cos(n\theta)$ も同族の曲線で、$\theta$ を $\pi/(2n)$ だけ回転した形になる。
スコットランドの数学者 Colin Maclaurin(1698–1746)が研究したことから「マクローリンの螺旋」とも呼ばれる。
名称に「螺旋」とあるが、$n$ の値によっては円・直線・双曲線などになり、一般には螺旋状の曲線とは限らない。
2. 特殊形の一覧
指数 $n$ を変えると、古典的な曲線が次々に現れる。代表的な $n$ について、極座標方程式 $\eqref{eq:def}$ がどの曲線に帰着するかを、式の導出とグラフとともに見ていく。
以下の導出では、極座標 $(r,\theta)$ と直交座標 $(x,y)$ を結ぶ次の関係を繰り返し用いる(図2)。
$$x = r\cos\theta,\quad y = r\sin\theta \tag{2}\label{eq:xy}$$これは、原点からの距離 $r$ と $x$ 軸から測った角 $\theta$ で点の位置を表す極座標を、直交座標へ翻訳する基本式である。
$n = -2$:直角双曲線
式 $\eqref{eq:def}$ で $n=-2$ とおくと $r^{-2} = a^{-2}\sin(-2\theta)$。奇関数の性質 $\sin(-2\theta) = -\sin 2\theta$ から $r^{-2} = -a^{-2}\sin 2\theta$、すなわち $\dfrac{1}{r^2} = -\dfrac{\sin 2\theta}{a^2}$。両辺に $a^2 r^2$ を掛けて整理すると、左辺の $r^{-2}$ が右辺へ移って $r^2\sin 2\theta = -a^2$ となる。さらに倍角公式 $\sin 2\theta = 2\sin\theta\cos\theta$ と関係式 $\eqref{eq:xy}$ を使うと
$$r^2\sin 2\theta = r^2\cdot 2\sin\theta\cos\theta = 2(r\cos\theta)(r\sin\theta) = 2xy$$となるので $2xy = -a^2$、すなわち $xy = -\dfrac{a^2}{2}$。これは「$xy=$ 一定」の形で、座標軸を漸近線とする直角双曲線(漸近線が直交する双曲線)である。曲線は第2・第4象限に現れる。
$n = -1$:直線
式 $\eqref{eq:def}$ で $n=-1$ とおくと $r^{-1} = a^{-1}\sin(-\theta) = -a^{-1}\sin\theta$。よって $r\sin\theta = -a$、関係式 $\eqref{eq:xy}$ より $y = -a$。原点から一定の距離にある直線である($\cos$ 版では $x = a$ の鉛直線)。曲率が恒等的にゼロになる特別な場合である。
$n = -1/2$:放物線
式 $\eqref{eq:def}$ で $n=-1/2$ とおくと $r^{-1/2} = a^{-1/2}\sin(-\theta/2)$。両辺を2乗して整理すると $r = \dfrac{a}{\sin^2(\theta/2)} = \dfrac{2a}{1-\cos\theta}$。これは焦点を原点にもつ離心率 $e = 1$ の円錐曲線、すなわち放物線の極方程式である。
$n = 1/2$:カージオイド
式 $\eqref{eq:def}$ で $n=1/2$ とおくと $r^{1/2} = a^{1/2}\sin(\theta/2)$。両辺を2乗して $r = a\sin^2(\theta/2) = \dfrac{a}{2}(1-\cos\theta)$。1つの尖点をもつ心臓形=カージオイドになる。固定円に外接して同じ半径の円を転がしたとき、円周上の点が描く軌跡でもある。
$n = 1$:円
式 $\eqref{eq:def}$ で $n=1$ とおくと $r = a\sin\theta$。両辺に $r$ をかけると $r^2 = a r\sin\theta$。$r^2 = x^2+y^2$ と関係式 $\eqref{eq:xy}$($y = r\sin\theta$)より $x^2 + y^2 = a y$、すなわち $x^2 + \left(y - \dfrac{a}{2}\right)^2 = \left(\dfrac{a}{2}\right)^2$。中心 $\left(0, \dfrac{a}{2}\right)$、半径 $\dfrac{a}{2}$ で原点を通る円である。
$n = 2$:ベルヌーイのレムニスケート
式 $\eqref{eq:def}$ で $n=2$ とおくと $r^2 = a^2\sin 2\theta$。$r^2 = x^2 + y^2$ と、関係式 $\eqref{eq:xy}$ から得られる $r^2\sin 2\theta = 2xy$ より $(x^2 + y^2)^2 = 2a^2 xy$。8 の字形のベルヌーイのレムニスケートで、2 定点(焦点)からの距離の積が一定という性質をもつ。
このように、$n$ が正の整数のとき曲線は $n$ 枚の花弁をもち(図1 の $n=3$ がその例)、$n$ が分数 $p/q$(既約)のときは形がより複雑になる。$\sin$ を $\cos$ に置き換えると、同じ曲線が原点まわりに回転して現れる。
ギャラリー
次の一覧は、$n = p/4$ として整数 $p$ を $-8$ から $8$ まで動かしたときの形の変化をまとめたものである($p=0$ は $r=0$ となって退化するため除く)。$p$ が $4$ の倍数($n$ が整数)のときは前述の古典曲線が、それ以外では花弁状($n>0$)や非有界な曲線($n<0$)が現れる。
3. 曲率
正弦螺旋の曲率
正弦螺旋 $r^n = a^n \sin(n\theta)$ の曲率半径 $\rho$ は
$$\rho = \frac{a^n}{(n+1)\,r^{n-1}} \tag{3}\label{eq:rho}$$と表される($n \neq -1$)。この曲率半径の公式は正弦螺旋(マクローリン螺旋)の古典的な結果として知られている。
$n=1$(円)の確認
$r = a\sin\theta$ は半径 $a/2$ の円。式 $\eqref{eq:rho}$ より $\rho = a/(2 \cdot r^0) = a/2$(定曲率)。円の曲率半径 $a/2$ に一致する。
$n=2$(レムニスケート)の曲率半径
式 $\eqref{eq:rho}$ より $\rho = a^2/(3r)$。最大 $r = a$ のとき $\rho = a/3$。頂点での曲率半径は $a/3$ である。
よくある質問
Q1. 正弦螺旋とは何か
極座標で rⁿ = aⁿ sin(nθ) と表される曲線族の総称である。指数 n の値によってレムニスケート(n=2)、円(n=1)、直線(n=-1)、直角双曲線(n=-2)などの古典的曲線が特殊形として現れる。
Q2. n=2 のとき正弦螺旋はどのような曲線か
r² = a² sin(2θ) はベルヌーイのレムニスケートに一致する。この曲線は8の字形で、2つの焦点からの距離の積が一定という性質をもつ。
Q3. 正弦螺旋の曲率半径はどう表されるか
正弦螺旋 rⁿ = aⁿ sin(nθ) の曲率半径は ρ = aⁿ / ((n+1)·rⁿ⁻¹) で表される。特に n=1(円)のとき曲率半径は一定値 a/2 になる。
関連項目・参考資料
サイト内の関連ページ
- エピ螺旋(幾何学入門) — 別種の極座標螺旋曲線
- リサジュー曲線(幾何学入門) — 正弦波合成による曲線
参考資料
- Wikipedia: 正弦波螺旋
- Wikipedia (en): Sinusoidal spiral