アステロイド

Astroid

中級(大学教養レベル)

このページの目標

アステロイドの方程式と、円の内側を 1/4 サイズの円が転がる軌跡(ハイポサイクロイド)としての構成を理解する。

1. アステロイドとは

アステロイド(astroid, 星芒形)は、$4$ つの尖点(接線の向きが急に変わるとがった点)を持つ星形の曲線である。半径 $a$ の固定円の内側を、半径 $a/4$ の円が滑らずに転がるときに、転がる円上の $1$ 点が描く軌跡で、ハイポサイクロイド(円の内側を別の円が転がって描く曲線)の半径比 $4:1$ の特別な場合にあたる。

名前はギリシャ語の astron(星)に由来し、星のように見える形であることを表す(小惑星を指す asteroid とは別の語)。

半径 a
図0: 半径 $a$ の固定円(灰)の内側を半径 $a/4$ の円(青)が滑らずに転がる。青円上の $1$ 点(赤)が描く軌跡がアステロイド。$\theta$ を $1$ 周させると $4$ つの尖点ができる。

2. 方程式

陰関数表示

$$x^{2/3} + y^{2/3} = a^{2/3}$$

パラメータ表示:$x = a\cos^3 t,\ y = a\sin^3 t,\ t\in[0, 2\pi]$。

面積:$S = \dfrac{3\pi a^2}{8}$(半径 $a$ の円の面積 $\pi a^2$ の $\tfrac38$ 倍)。周長:$L = 6a$(円と違い $\pi$ が現れないのも面白い)。$x$ 軸・$y$ 軸方向に長さ $a$ の $4$ 尖点を持つ。

x y (a,0) (0,a)
図1: アステロイド $x=a\cos^3 t,\ y=a\sin^3 t$($a=1$)。$x,y$ 軸方向の $4$ 点 $(\pm a,0),(0,\pm a)$ が尖点。

3. 導出

3.1 転がる円からパラメータ表示へ

固定円(中心=原点、半径 $R=a$)の内側を、半径 $r=a/4$ の円が滑らずに転がるとする(図0)。転がる円の中心 $C$ は原点から距離 $R-r$ にあり、その角度を $\theta$ とすると

$$C=\bigl((R-r)\cos\theta,\ (R-r)\sin\theta\bigr).$$

いま接触点は大円上で角 $\theta$ の位置にあり、$C$ から見て真外向き(方向 $\theta$)にある。「滑らずに転がる」=接触した弧の長さが両円で等しいという条件から、$\theta=0$ の初期接触点から現在までで

$$\underbrace{R\,\theta}_{\text{大円の弧}}=\underbrace{r\,\beta}_{\text{小円の弧}}\ \Longrightarrow\ \beta=\frac{R}{r}\theta.$$

$\beta$ は小円上で「接触方向」から「印をつけた追跡点 $P$」までの回転角。内側を転がると $P$ は接触方向 $\theta$ から角 $\beta$ だけ戻るので、$P$ の $C$ から見た向きは $\gamma=\theta-\beta=-\dfrac{R-r}{r}\theta$。ゆえに

$$P=C+r(\cos\gamma,\sin\gamma)=\Bigl((R-r)\cos\theta+r\cos\tfrac{R-r}{r}\theta,\ (R-r)\sin\theta-r\sin\tfrac{R-r}{r}\theta\Bigr).$$

これが一般のハイポサイクロイドの式である。$a/4$ の円なので $R=4r$、したがって $\dfrac{R-r}{r}=3$ となり

$$x=3r\cos\theta+r\cos3\theta,\qquad y=3r\sin\theta-r\sin3\theta.$$

ここで3倍角の公式 $\cos3\theta=4\cos^3\theta-3\cos\theta,\ \sin3\theta=3\sin\theta-4\sin^3\theta$ を代入すると、$\cos\theta,\sin\theta$ の一次項がちょうど相殺する:

$$x=3r\cos\theta+r(4\cos^3\theta-3\cos\theta)=4r\cos^3\theta,$$ $$y=3r\sin\theta-r(3\sin\theta-4\sin^3\theta)=4r\sin^3\theta.$$

$4r=R=a$、$t=\theta$ と書き直して、パラメータ表示が得られる(回転項が消え、純粋な $3$ 乗が残るのがアステロイドの本質)。

パラメータ表示

$$x=a\cos^3 t,\qquad y=a\sin^3 t,\qquad t\in[0,2\pi].$$

3.2 パラメータ表示から陰関数表示へ

$t$ を消去するだけでよい。両式から

$$\left(\frac{x}{a}\right)^{2/3}=\cos^2 t,\qquad \left(\frac{y}{a}\right)^{2/3}=\sin^2 t.$$

辺々足してピタゴラスの恒等式 $\cos^2 t+\sin^2 t=1$ を使い、$a^{2/3}$ を掛けると

$$\left(\frac{x}{a}\right)^{2/3}+\left(\frac{y}{a}\right)^{2/3}=1\ \Longrightarrow\ x^{2/3}+y^{2/3}=a^{2/3}.$$

3.3 面積 $S=\dfrac{3\pi a^2}{8}$

以下では微分 $\dfrac{dx}{dt}=-3a\cos^2 t\sin t,\ \dfrac{dy}{dt}=3a\sin^2 t\cos t$ を用いる。囲む面積はグリーンの定理で書ける:

$$S=\frac12\oint(x\,dy-y\,dx)=\frac12\int_0^{2\pi}\!\Bigl(x\tfrac{dy}{dt}-y\tfrac{dx}{dt}\Bigr)dt.$$

被積分関数は、ここでも恒等式で因数がまとまる:

$$x\tfrac{dy}{dt}-y\tfrac{dx}{dt}=3a^2\cos^4 t\sin^2 t+3a^2\sin^4 t\cos^2 t=3a^2\cos^2 t\sin^2 t\underbrace{(\cos^2 t+\sin^2 t)}_{=1}=3a^2\cos^2 t\sin^2 t.$$

倍角公式 $\cos^2 t\sin^2 t=\tfrac14\sin^2 2t=\tfrac18(1-\cos4t)$ より積分は

$$\int_0^{2\pi}\cos^2 t\sin^2 t\,dt=\int_0^{2\pi}\tfrac18(1-\cos4t)\,dt=\frac{\pi}{4},$$ $$\therefore\ S=\frac{3a^2}{2}\cdot\frac{\pi}{4}=\frac{3\pi a^2}{8}.$$

これは半径 $a$ の内接円の面積 $\pi a^2$ の $\dfrac38$ 倍にあたる。星形は円の内側にすっぽり収まり、$4$ つの尖点だけが円に接する(図2)。

$\dfrac{3\pi a^2}{8}$ 円 $\pi a^2$
図2: 半径 $a$ の円(灰)に内接するアステロイド(青)。$4$ つの尖点だけが円に接し、面積は円の $\dfrac38$ 倍。

3.4 周長 $L=6a$

弧長の公式に入れると、面積と同じ因数分解が効いて

$$\Bigl(\tfrac{dx}{dt}\Bigr)^2+\Bigl(\tfrac{dy}{dt}\Bigr)^2=9a^2\cos^2 t\sin^2 t(\cos^2 t+\sin^2 t)=9a^2\cos^2 t\sin^2 t,$$ $$\sqrt{\Bigl(\tfrac{dx}{dt}\Bigr)^2+\Bigl(\tfrac{dy}{dt}\Bigr)^2}=3a\,\lvert\cos t\sin t\rvert=\frac{3a}{2}\,\lvert\sin 2t\rvert.$$

絶対値が現れるため、対称性を使って $4$ つの尖点で $4$ 等分し、$\sin 2t\ge0$ となる $1$ 本の弧を計算して $4$ 倍する:

$$\ell=\int_0^{\pi/2}\frac{3a}{2}\sin 2t\,dt=\frac{3a}{2}\Bigl[-\tfrac12\cos2t\Bigr]_0^{\pi/2}=\frac{3a}{2},\qquad L=4\ell=6a.$$

(絶対値を無視して $0\to2\pi$ で積分すると符号が打ち消し合い $0$ になってしまう。曲線長は正なので $\lvert\sin2t\rvert$ の区間分割が要点。)

4. はしごのスライドと接線(包絡線)

長さ $a$ の棒(はしご)の両端を、それぞれ $x$ 軸と $y$ 軸に乗せてスライドさせる。棒をあらゆる角度に倒していくと、棒たちは星形の領域の縁をなぞり、どの棒もその内側へは入り込めない。この境界、すなわち棒の族の包絡線(envelope=族のすべての線に接する曲線)がアステロイドである(図3)。壁に立てかけたはしごが滑り落ちるときにできる境界、と言ってもよい。

x y a
図3: 両端を $x,y$ 軸に乗せた長さ $a$ の棒(灰)の族。オレンジは $1$ 本の棒(長さ $a$)。棒たちの包絡線がアステロイド(青)になる。

なぜ星形が現れるのか。鍵は、スライドする棒の一本一本が、アステロイドにちょうど $1$ 点で接する接線になっていることである。アステロイド上のパラメータ $t$ の点 $(a\cos^3 t,\ a\sin^3 t)$ で接線を引くと、それは両軸を $(a\cos t,0)$ と $(0,a\sin t)$ で切り、切片間の長さは $\sqrt{a^2\cos^2 t+a^2\sin^2 t}=a$ と、$t$ によらず常に棒の長さ $a$ に等しい(図4)。つまり「両端を軸に乗せた長さ $a$ の棒」と「アステロイドの接線」は同一の直線族であり、アステロイドはそれらすべてが接する曲線——だから棒の族の包絡線として立ち現れる。

x y P (a cos t, 0) (0, a sin t) a
図4: アステロイド上の点 $P$ での接線(オレンジ)。$x$ 切片と $y$ 切片の距離は $t$ によらず常に $a$。

よくある質問

Q1. アステロイドとは何か?

4尖点をもつ星形の曲線。半径 a の固定円の内側を半径 a/4 の円が転がるとき、転がる円上の1点が描く軌跡。陰関数で x^(2/3)+y^(2/3)=a^(2/3)。

Q2. どんな身近な現象に現れるか?

長さ a のはしごを壁に立てかけ、底を滑らせていくと、はしごの軌跡の包絡線がアステロイドになる。

Q3. 面積はどう求めるか?

パラメータ表示 (a cos³t, a sin³t) を用いて積分すると S=3πa²/8。これは半径 a の円の面積の 3/8 倍。

Q4. なぜアステロイドと呼ばれるのか?

ギリシャ語の astron(星)に由来し、4尖点をもつ星のような形であることを表す。小惑星を指す asteroid とは別の語である。

関連項目・参考資料

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参考資料

  • Wikipedia: アステロイド
  • Wikipedia (en): Astroid
  • Lockwood, E. H. A Book of Curves. Cambridge University Press, 1961.
  • Lawrence, J. D. A Catalog of Special Plane Curves. Dover, 1972.